第1311話 ■バブルを映画で考える
映画のお話。「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」を公開初日に見た。とても笑える作品だった。ホイチョイ・プロダクションズ最新作、とあれば力の入れ具合からしてそうだし、阿部寛、広末涼子、薬師丸ひろ子とくれば、鉄板(固い、間違いない、の意味)である。それに同時代を生きた懐かしさがそれをより強固にする。
現在の日本は借金大国。800兆円にも上る借金があり、財務省審議官の下川路(阿部寛)らの計算によると、あと2年前後で国家は破綻し、政府は機能しなくなると予想。そんなとき、下川路の恋人だった、家電メーカー研究員の真理子(薬師丸ひろ子)が偶然洗濯機型のタイムマシンを発明した。そこで下川路らはこのタイムマシンを使用して、借金の現況となったバブル崩壊による不況をくい止めようと計画し、実行に移した。目的の時間は1990年3月。
この頃と言えば、私は入社1年目が終わる頃だった。就職に関して言えば、売り手市場で、私たちも後輩の獲得に向けて出身大学を訪問させられるような、大求人ブームだった。電話帳並みの就職案内誌が送られてきて、地方からも面接に行っただけで交通費がもらえ、掛け持ちで小遣い稼ぎができると喜んでいた友人もいた。会社の中では経費に対して寛容で、タクシー券も使えたし、合宿という名の宿泊を伴う会議なども頻繁に行われていた。接待もあった。もちろん、定時後にボディコンスーツで街に繰り出していく女性社員もいた。ただ、映画のような金あまりぶりにはちょっとリアリティを感じられなかった。業界の周りではそうだったかも知れないが。
ただ、残念なことにこの映画はせこい。一部金を掛けたらしいシーンがあるのは事実だが、それ以外が非常に安っぽい。これほどの話題性のある作品にはもうちょっとがんばって欲しかった。それと、キャスティングが主役級を除くとちょっとお粗末。ミスキャストな部分もあった。これも制作費との絡みだろうか?。そんな中、非常に良かった出演者は吹石一恵である。ロングのソバージュヘアーと太い眉で現在に生きるバブルな女性を見事に演じていた。できれば元CCガールズのバブル青田にも何かちょい役でも良いので出て欲しかった。それと時代考証のミスが一つ。当時の大蔵省の局長のデスクの上にパソコンが置いてあるが、あの形のCDドライブ付のパソコンはあの頃にはなかったはず。
結局、バブル崩壊以降の不況の原因はこの映画にある通り、当時の大蔵官僚のミス(故意)によるものなのだろうか?。既に私が大学在学中に世は好景気に沸いた状態だった。経済学部の学生だった私は、同じ価値のものを価格表現のみ書き換えた形での好況に、その限界が近いことを既に感じていた。「バブル」という言葉はその渦中においては存在せず、それが終わった後に、「バブルがはじけた」という形で使われだし、一般に浸透したと私は記憶している。
(秀)
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