第1310話 ■パンク修理

 自転車のタイヤがパンクしたときの話。実家の2軒隣が自転車屋だったため、そこに自転車を引いていく。

 中学生当時、自転車好きの私はできるだけ自分でメンテナンスしたいがために、パンク修理の道具も一通り持っていた。タイヤからチューブを取り出すタイヤレバーが3本。チューブ入りのゴムのり。紙やすりにゴムパッチシール。自転車屋のおじさんの見よう見まねでやってみる。えいこら、えいこら、チューブを引きずり出す。そして穴の開いた箇所を探し出すのが、1つの山場。水に浸けて泡で確認するのだが、これがなかなかうまくできない。洗面器では浅すぎるせいかもしれない。何とか見つけ出した穴の周囲を紙やすりでこすり、ゴムのりを塗る。そしてそこにゴムパッチシールを貼る。

 形としては作業ができたものの、翌日になるとタイヤは元のように空気が抜けていた。親にこのことを話すと「自分で(パンク修理が)できるはずがない。自転車屋へ持っていけ」と言って、修理代をくれた。

 自転車屋のおじさんの作業を見ながら再度確認するが、自分がやったことにそれほど大きな間違いはない。ただ、修理箇所を軽石でこするところが違う。範囲も広く、入念に行われる。そして、ゴムのりを塗ってからおじさんはタバコに火を点けた。片手にチューブを握り、もう片方の手でタバコをふかす。タバコを吸い終わるころを見計らって、おじさんはゴムパッチシールを貼る。どうやらすぐには貼ってはいけないようだ。そしてタバコはその頃合いを計るためのタイマーだったのかもしれない。その後パッチシールを貼ったところを木の台に載せてゴムのハンマーで叩く。それから、うまく穴がふさがっているかを確認して、チューブをタイヤの中に戻す。

 基本的にこの作業の流れは今も変わらないだろうし、ほとんどの自転車屋も同じようにやっているだろう。ただ、最近は修理箇所の研磨を電動のモーターに付いたヤスリでやっているところがあった。そして、仕上がった際に空気を入れるのが手動のポンプから電動のポンプに変わっていた。

 かつてのパンクの修理代は500円くらいだった。子供にとっては高額で、何とか自分でできないかと考える金額だが、大人からしてみればこんな金額なら任せてしまうし、自分でやろうなんて考えもしない。それは今で千円ぐらいになっても同じこと。見てしまうと簡単そうだが実は技術とノウハウが料金の大半を構成している。そんなに日に何件ものパンク修理があるはずもなかろうから、結構街の自転車屋の営業は昨今特に厳しいものになっているに違いない。自転車操業??。

(秀)