第1312話 ■それでもボクはやってない

 今回も映画の話。日本の裁判において痴漢冤罪裁判がいかに不条理に行われているかをテーマにした作品だと言われている。それを訴えれば監督の目的は達成できたのかもしれないが、結論として冤罪であった場合、戦えと言いたいのか、罪を認めてしまった方が得策と言いたいのかは結局分からなかった。

 急いで駅員に背中を押されて乗車した彼の前に被害者となる女子学生が乗っていた。スーツの後ろが電車の扉に挟まれ、それを取ろうと引っぱったりして後、電車は目的の駅に到着し、スーツが挟まっていた扉が開き、降りて歩き出したところ、女子学生に腕を掴まれ「痴漢したでしょう」と言われる。

 冒頭、実際に痴漢をした別のサラリーマンが逮捕されるストーリーが登場する。彼は当初否認するが、手に粘着シートを貼られ、手から採取した繊維の一部を被害者の下着のものと照合する、と言われて観念し、罪を認め、昼頃には釈放された。一方、この映画の主人公は一貫して否認し、逮捕され留置される。

 痴漢行為が衣服の上から触った、都の迷惑条例違反の場合、略式起訴で5万円程度の罰金刑だと紹介されていた。即時釈放される。一方、否認した場合は拘留され、家宅捜索も受ける。保釈もなかなか認められず、ようやく認められても200万円もの金額が必要となる。

 そこまで時間と金とそして手間まで掛けて自らの無実を主張しても、そうそう報われると限らない。こうなってくると真実はどうであれ、罰金で手を打とうかという思いがよぎる。「それでもボクはやってない」、とは主人公が最後に口にする台詞である。結末はここから判断して欲しい。映画自体はテンポも良く面白いのだが、後味の悪さの残る作品だった。

(秀)