第1348話 ■玉入れの特訓

 それは、小学1年生のときの運動会の数日前のことだった。何日も前から続けている玉入れの練習で、僕ら3組は4クラス中いつもビリで、同じ赤組を構成する1組に多大な迷惑を掛けていた。そのことを担任の先生はとても気にしているらしく、「1組に悪い」という台詞をことあるごとに我々に発していた。

 そこで、その日の帰りの会が終わると、全員机と椅子を教室の後ろに移動させて、玉入れの特訓となった。窓は全て閉めて、すりガラスのため外からは見られない。教室の柱の上の方に先生がバケツを吊り下げると、先生がこっそり体育倉庫から持ち出した赤い玉を配って練習開始。バケツを籠と見立てての練習。よく見定めてから投げること、下手から投げてみること、などの指導が実技を交えて行われた。

 その成果は総練習のときに発揮され、僕等の自信にもなった。結局、本番でははっきり覚えていないのだが、1組の足を引っ張ることなく、2対1で我が赤組が勝ったような気がする。もちろん、一番喜んだのは我々ではなく、担任の先生だった。

 幼稚園や小学校での玉入れを見るたびに、あのバケツの玉入れを思い出す。今週末は次女が小学校の運動会で玉入れを行う。がんばれ、赤組。そして白組も。

(秀)