第1511話 ■合宿勉強会

 田舎ながら、県内屈指の進学高校に入学したので、家での学習においてもいろいろと指導があった。家に帰って1日5時間の自宅学習を義務づけ、週単位に日課表の提出なども何度も行われた。1日5時間となると、19時からだと24時になる。食事と入浴などをすると、テレビなんか見ている暇などない。私は帰宅部で家も近かったが、部活動をしていて、家が遠い人などは大変だったと思う。もちろん、私はそんな長時間勉強できるものではなく、日課表はいつも偽造していた。

 中学校から進学して、いきなり5時間という習慣作りは難しかろうということで、入学してから1ヶ月ぐらい経った日に1泊2日の合宿勉強会が行われた。学校の敷地内にある同窓会館への泊まり込みである。共学のクラスであったため、男女別に、2クラス合同で行われた。夕方、その日の授業が終わると、荷物を持って同窓会館に入り、まずはその日の授業の復習をやらねばならない。だだっ広い、畳敷きの宴会場のような部屋だった。

 そしてしばらくすると、日頃は学生食堂になっている1階で夕飯をかき込み、入浴をすると、いよいよ寝るまでの勉強時間である。基本は自習だが、分からないところは居合わせている先生に教えてもらうことができた。私の限界は2時間で、それ以上は苦痛でしかならない。しかもテレビが見られないとなると、落ち着かない。その日は木曜日で9時からは「ザ・ベストテン」を見たかったのだが、もちろん無理だった。

 何とか5時間をやり過ごし、いよいよ消灯の時間になったのは12時過ぎだったと思う。勉強部屋の座卓を片付けてそこに一斉に布団を敷く。修学旅行ならこれからが本当は楽しい時間だが、もう誰もヘトヘトである。かと言って、そのまま眠ってしまえそうな雰囲気でもない。私と仲間数人はこの木曜日の深夜にラジオを聞くことを予定していて、ポケットラジオを持ち込んでいた。何しろ「ビートたけしのオールナイトニッポン」の放送日なのだから、熱心なリスナーにとっては当然のことである。

 うかつに眠ってしまってはいけないということで、腕時計のアラームを1時ちょっと前にしておいた。その日までいくつかのクラスでこの勉強会は実施されていたが、この日は消灯後も騒がしいということで、泊り込みの先生が何度も見回りに来ていた。そして、1時ちょっと前にまた先生が姿を現した。そのときちょうど私がセットした腕時計のアラームが静まり返った空間に高らかに鳴った。先生は怒ったが暗闇のおかげで犯人までは特定されなかった。しかし、このためラジオ放送の冒頭を聞くことはできなかった。

(秀)