第155話 ■ご挨拶文
- 1999.12.01
- コラム
趣味で文章を書いているからには多少のビジネス文書も書くのも厭わない。法務文書でもマニュアルの類でも日本語であれば、やぶさかでない。ただ、どうしてもあまり気が進まない文書がある。議事録というやつだ。書くことよりも会議中、各人の発言をもらさずに書き留めなければならないのが苦痛なのかもしれない。いっそ、他人(できれば複数)が書いたメモをかき集めて議事録を創作した方が楽かもしれない。それに、しばしば目にする他人が書いた議事録や添付の配布資料を読んで、会議の中身が分かることは困難である。議事録とはそんなもんだ。例え文豪が書いた議事録というものが仮に存在するとしても、文章としての価値は果たしてどんなものだろう。
ましてや、末席で針のムシロ状態の会議の議事録など、あの悪夢が蘇って来そうで心理的に重い。それでもとりあえず、テンプレートでそれらしいファイルを探し、メモを手掛かりに紙幅を埋める作業に着手した。しかし、すぐに気持ちは別の方に行ってしまった。目的のテンプレートファイルを探そうとしたフォルダには実に様々な文例が250余あり、そのタイトルが面白いのである。確かにまじめな一般的なビジネス文例があるし、「始末書」という心強い(?)文例もある。そんな中に混じって、作った方は真面目かもしれないがブラックなものや「こんなもん、出さない方が良いだろう」という文例がある。幾つか拾ってみよう。「借金の保証人の依頼」、「借金の保証人を断る」、「保証人を断られて」、「婚約解消のお詫びと報告」、「おつきあいのお願い」、「おつきあいを断る」、etc・・・。全体的に「承諾」の内容の文例がないのは創作者の意図だろうか。「お断り」というネガティブなものは文章の中身を見るまでもなく、タイトルだけで面白い。「離婚した女性への激励」というのは、ネガティブなのかポジティブなのか分からない。
そうそう、せっかくだから新しい読者へメルマガの冒頭でご挨拶でもと思って、文例を探してみたが、近いものでも「新規開店のご挨拶」では、やはり無理があり、やめることにした。メルマガ1回目だから、執筆者としての「ご挨拶」だと思って読み始めた、あなた。「秀コラム」はそれほどストレートではない。この面白味が分かっていただけたら、これからもおつきあい願いたい。けど、断りのメールは受け付けていない。
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