第1569話 ■9時前10分

 木曜日の原稿は「秘密のケンミンSHOW」というテレビ番組を見ながら書くことが多い。各県出身のタレントがだいたい20人ぐらい集まって(全県から出身タレントが毎回揃っているわけではない)、その県やその県民に特有なことを紹介する番組だ。地元の人はそのことを普通に思い、全国的に同じような状況だと思っていることが、その地域に限っての文化や風習であることを面白おかしく紹介している。特に大阪人を取り上げるケースは多い。

 この日は大分県人が時刻の呼び方が独特であることを紹介していた。例えば8時50分を別の呼び方として、一般的には9時10分前と呼ぶが、大分県人はこれを9時前10分と呼ぶようだ。実際に大分で聞き取りの調査をしていた。このように呼ぶ理由は9時10分前というのが曖昧さをもっていると、大学教授が指摘していた。例えば9時8分くらいも9時10分前と表現できる、と。

 実は我が実家でも、9時前10分という言い方をしていた。大分には何の地縁もないはずの父親がそう呼んでいた。そういう環境で育ったため、私は学生の時にアルバイトに遅刻したことがある。「明日は早出で、8時10分前に来て欲しい」と主任さんに言われた。そこで翌日は8時5分頃に出勤したが、先方の希望していた時刻は7時50分だった。

 大分県人は自分達の表現が全国的にも共通の呼び方だと思っていた。私としてはその環境で育ったからというわけでなく、大分県人の表現が曖昧さがなくて良いと思っている。

(秀)