第1594話 ■嘘っぱちのシアタールーム

 車を買い替えたため、車屋巡りができなくなって、代わってモデルルーム巡りの回数が増えた。それでも、「現在のお住まいは?」と聞かれると、正直に「一戸建て」と言う。続いての「いつ頃お建てになりましたか?」、という質問にも正直に「2年前に建売を買った」と答えると、相手の戦力が急にダウンしてしまう。買う気がないからそれでも結構だが、それではせっかくのお土産がもらえない。せめてもう少しは、かまって欲しい。だから実家の建て替えの際の研究中ということにしている。

 さて、そんなモデルルーム巡りの傾向として、最近、シアタールームを備えているところが増えた。10畳近くの部屋が映画などを楽しむだけの専用ルームとして設けられている。ところが、あまりにもリアリティがない。いくらモデルルームが大きく贅沢に作られているとしても、書斎とかと兼用するならまだしも、専用の部屋というところに違和感がある。逆に、書斎との兼用であれば、かなり現実的な提案にも思えるのだが。

 とりあえずシアタールームの椅子に腰を下ろしてみる。天井前方に3つ、後方に2つのスピーカーが埋め込まれていて、床に重低音用のスピーカーが置かれている。5.1chだ。正面にはスクリーンがあって、天井からプロジェクターが吊るされている。実はこのプロジェクターだが、今がタイミング的に非常に難しい頃だ。ハイビジョン対応のプロジェクターというものも存在するが、まだ非常に高価である。そのためか、そのモデルルームに設置されているものはハイビジョンのものではなかった。そういう意味ではリアルなのかもしれない。

 ところが、スクリーンに100インチ程度のサイズで投影するとなると、ハイビジョン映像でないと、せっかくの大画面での迫力が、画面が荒くて台無しである。メディアの中心もブルーレイということになるだろう。だから、中途半端に今シアタールームを作ってしまうと数年後には不満しか残らなくなるように思う。少なくともハイビジョンプロジェクターがもっと安くなるのを待った方が良い。

 専用のシアタールームを作れるほどお金を持っている人で、このあたりの情報や知識を持っている人なら、ハイビジョンのプロジェクターを買うだろうし、そうでない人も、数年後にやや安くなったハイビジョンのプロジェクターを買い換えることなど、苦にもならないとしたら、単なるおせっかいかもしれない。それ以上に、専用のシアタールームは週のうちどれくらいの時間使用されるものなのかが、気になる。物置になりやしないかと、心配してしまう。いや、品のないカラオケルームになるのが怖い。

(秀)