第1848話 ■楽屋より、あるある噺

 千葉県八千代市にある地方落語会の裏方を手伝うようになって、早いもので6年が経った。以前みたいに寄席や落語会には行くことはすっかりなくなったが、毎月のこの裏方は続いている。裏方とは、楽屋係である。楽屋からの進行と出囃子を鳴らすこと。そして、そのための機材の設営というのが主な仕事である。

 基本的に噺家さんは毎回二人が来るので、その二人の会話を耳にすることはあるし、片方の噺家さんが高座に上がっているときは、楽屋には私ともう一方の噺家さんと二人だけになる。まあ、後者の場合は、先方が話し掛けるまでは、基本的にはこちらから声を掛けることはない。年の近い演者さんだとやりやすいが、年配の師匠とかになると、こちらから話しかけられる雰囲気ではない場合が多い。

 基本的に、寄席や落語会の高座で噺家が話したことは、口外してはならないという暗黙のルールがあった。しかしこれがブログやTwitterの登場により一変してしまった。「こんなことを言っていた」ということが、即日のうちに実況のごとくネットに流れる。その一端に、自分がいたことは確かに事実である。「外で言っちゃダメですよ」と念を押すものの、もはや本人もそれが守られるとは思ってもいないと思う。なーに、本人は「ここだけの話」を他所でも使いたいもののネットで先にネタバレして困るわけで、情報の機密性は所詮笑い話程度でしかない。

 何と言っても、楽屋での演者さん同士の会話が面白い。しかし、これこそ他所では言ってはいけないことばかりだ。まあ、そんな中でも、いくつかを披露すると「歌丸さんにお見舞い出した?」というのがその当時あった。笑点を何度か休んでいた頃の話。会話の当事者が誰であるかとその答については、ヒ・ミ・ツ。他にはあるあるネタで、高座に上がってセリフが何も出てこない夢をよく見る、とか、まだ自分ができない大ネタの噺をやろうと高座に上がろうとしている夢を見る、とか。その噺は「芝浜」らしい。某二ツ目さんが言っていた。

 同じ師匠を持つ、兄弟会なんてのもなかなか面白い。師匠や弟子は選べるが、兄弟子は選べない、なんて話を聞いたことがある。実際に弟子入りするにあたって、師匠については調べるが、兄弟子についてなんてほとんど情報がないし、そんなことまで頭が回らないはずだ。まあ、金原亭の兄弟弟子はとても仲良しである。

(秀)