第1918話 ■キュレーションサイトについて

 DeNAのキュレーションサイトの話題について。既に多くのメディアが報じているので、ことの概要は周知のこととして取り上げたい。なぞるだけでは意味が無いし、この雑文は日付とともに社会を眺め直す物差しとなりたいために、敢えてこの話題に触れておきたい。

 そもそも、まとめサイトやキュレーションサイトという存在が私は嫌いだった。オリジナリティがないからだ。他人のサイトの情報をまとめる作業で新たな価値を創造することはないと思っていたからだ。実際にはビジネスとなっているからには、何らかの価値を作り出していたことになるが、その価値創造に対する彼らの思想が今回の騒ぎのベースとなっている。

 誰もがコンテンツを投稿でき、あくまでも投稿によるプラットフォームを提供しているだけ、というのが当初のDeNAの立場であったが、結局は会社側がライターを使ってそのほとんどを書かせていたことが判明し、同社の立場は一層悪くなった。オリジナリティのない原稿で良い、グレーな書き換えを指示しながら、きっとわずかばかりの報酬で、コンテンツを集めていたに違いない。しかも、集めたコンテンツの質も悪かったし、専門家の監修どころか、そもそもの編集チェックすら間に合っていなかったようだ。外部ライターを使おうにも、安くするために素人を使ったり、ライターを管理する仕組みへの投資をしなかった結果と言える。

 そんないい加減な原稿ながら、巧みなテクニックにより、検索エンジンでの上位表示を獲得していた。Googleは赤っ恥を書かされた形だ。著作権という真贋での目利きができなかったわけだ。私はサイトの運営会社もそうだが、Googleも謝罪するべきだと思う。同一内容のサイトにはペナルティが与えられる一方で、そのルールをかいくぐるためにDeNAは書き換え、すなわち、巧みな偽物づくりの手法を指示した。機械的にルールに従って順位を決めただけかも知れないが、その影響力を考えると、Googleは今回の事件の遠因として道義的責任を感じて欲しい。反省の証として、大規模なキュレーションサイトは、そもそも上位表示させないくらいの対応があっても良さそうな気がする。

 続いて、ライターに対して。在宅勤務とかいろいろと今後も注目される分野だっただろうが、その出鼻をくじかれた格好だ。クラウドソーシングなんて、労働単価を切り下げ、総じてレベルを下げる仕組みでしかない。そして仲介業者がその上前をはね、新たなワーキングプアを生むだけ。安い単価でこき使われ、一方で働きが悪かったがために事件の引き金を引くこととなった社員らが何倍もの高給を食んでいる。そして、その頂点にいた人が、記者会見で頭を下げている。そんな映像を見て、どう思う?。実際にフリーランスなどに必要な素養は、そのビジネスそのもののスキルではなく、仕事を取ってくる営業力だったりする。労働単価を決めるキーポイントはここにある。今回の事件の被害者ヅラすることなく、末端での実行に関わっていたことを自覚して欲しい。たまたま今回はそれに関与していなくても、明日は我が身だ。

 今回は会社の管理体制の脆さからDeNAが槍玉に上がったが、その影で幾つかの同様のサイトが多数のコンテンツを非公開にするなどの影響が出ている。そもそもキュレーションサイトは著作権的に見て、構造的にかなり危ういものだ。正しく行うためには相応のコストが発生する。コンテンツそのものよりもそこに集まるアクセスにより価値があるビジネスモデル故の脆さもある。いずれ同様の事件がどこかの会社で起きていたことだろう。情報の信憑性やリテラシー教育の云々をいう一方で、都市伝説とか、血液型占いとか、そんなことがもてはやされる雰囲気の矛盾を利用者も自覚すべし。

(秀)