第1934話 ■「夢の中へ」

 探しものをする場合、必ずそこにあるはずということで始める場合と、どこにあるかすら分からないけど、とりあえず探し始めるという場合がある。買ったのは間違いないし、捨てるようなものでもないので、きっと家の中にはあるのだろう。自分の部屋にはないのだから、リビングにありそうだが、家人に聞いてみても、「知らない」と言う。

 探しものをするときにある言葉を口にしながら探すと必ず(?)見つかるという呪文のようなものがあったはず。けど、その情報を探し出すのは面倒だから、今回はスルーする。代わりに鼻歌として、「探しものは何ですか~♪」と口ずさんで、ウォークインクローゼットの扉を開けてみた。最近、ドラマの主題歌でも聞くようになった。

 井上陽水の「夢の中へ」はその2番の歌詞で、探すのを止めたときに見つかることもよくある話と言っているので、鼻歌がこの部分に差し掛かったところで、自分の探しものも止めてしまった。しかしそれは歌詞の中での話。よって、自分が探しているものが見つかるようなことはない。ただ、歌詞では探しものを止めさせようという意志があるのだから、しょうがない。

 要は、ナンパの歌なのだ。探しものの手を止めさせ、一緒に踊ろうという主旨である。ただ、そこからの「夢の中へ」というのは話が飛躍しすぎていやしないか。かなり現実離れしている誘い文句である。多くの人は忘れてしまっているだろうが、井上陽水はこの曲のヒットの後にある事件で逮捕・起訴されたことがある。本人は「夢の中へ」行ってたのかな??。

 あれこれ時間を掛けて探し出す思いをしたら、明日、100円ショップに行って、新たにもう1つ買った方が効率良い、甚だそんな程度の探しものの話題だった。鼻歌だけ、頭の中で回っている。

(秀)