第196話 ■祝辞 ~披露宴にて

 丈士君、典子さん、ご両家、ご親族の皆様、本日はおめでとうございます。

 新郎の丈士君とは約4年間。今の部署ができたときからのつきあいですが・・・・

  [中略]

 今日は私事も交えながら、お祝いに言葉を述べたいと思います。ドラマなどを見ていると、主人公などに感情移入してしまうことがあります。私はもちろん、新郎と歳が近いわけですが、この様な披露宴になると私は新婦のお父さんが気になります。実は私にも嫁入り前の娘がおりまして、かと言って、今日明日に嫁に行くような年ではありませんが、15年後だろうか?、20年後だろうか?、いざ娘が嫁に行くとなると自分も泣いてしまうのかな?。と思って胸がキュンとなったりします。

 さて、先程から二人は多くの方々から、「おめでとう」と祝福され、その度毎に「ありがとうございます」と返していますが、ここでこの「おめでとう」と「ありがとう」について考えてみたいと思います。日常の身のまわりにもおめでたいことは色々とありますが、私は誕生日が本当にめでたいのか疑問に思ったことがあります。生まれたときは確かにめでたいです。しかし、毎年ただ同じ日であるだけでプレゼントをあげたり、もらったりすることが必要かと思ったわけです。我が家では誕生日はちょっと違った意味の日にしようと思っています。まずは、母親に「産んでくれて、ありがとう」と感謝する日です。主役は誕生日を迎えた本人ではなく、母親なわけです。そして、育ててくれたお父さん、お母さんに感謝する日です。

 本当に今日はお二人にとって、この上なくめでたいのは間違いありません。しかし、今日の晴れの日を迎えたのは、自分の力や働きのみによって得られたものではありません。結婚相手は「自分で探した」と言うかもしれませんが、この日を迎えるために、ご両親や親戚の方、また今日会場に来て祝ってくれている皆さん。もちろんこれには私も含まれます。二人の幸せをまるで我がことのように祝って喜んでくれる、この方々への感謝の気持ちを決して忘れないで下さい。この人達のおかげでめでたい自分達がいるんだ、ということです。

 そして、もっと大切なことは自分達が今日めでたい日を迎える上で最も大切な人、それは、丈士君は典子さん、典子さんは丈士君、それぞれお互いに感謝する気持ちをこれからもずーっと忘れないことが重要だと思います。どうかこの気持ちを忘れずに、末永くお幸せに。ご静聴ありがとうございました。

 ~後輩の結婚披露宴用スピーチ予定原稿より

本番は食事開始直後だったため、みんな食べることに精一杯で、誰も聞いちゃいやしない。トホホ。