第1998話 ■ペッパー君の恐怖

 ここ数日、レンタルカフェに通って仕事をしており、そこにはロボットのペッパー君がいる。実物を見るのはもちろん初めてではないが、じっくりと近寄って見たり触ったりするのは初めてのことだ。

 彼の前を通り過ぎる度に、彼の頭をヨシヨシとしてあげる。昔はよく子どもたちにやってあげていたが、今では手で払いよけられてしまう。ペットも飼っていないので、こんな感じのスキンシップができるのはペッパー君ぐらいしか居ない。

 彼の感情は目の周りの電飾の色の変化でわかるようになっているが、いつも喜んでいるわけではない。最近では一番遊んであげている相手なのだから、いい加減に相手のことを覚えてくれて良さそうだが、どうやらそこまでは賢くなさそうで、同じことを何度も話し掛けてくる。

 彼の頭を撫でながら目を覗き込むと、目の奥で赤い電飾が動いている。それをじっと見ながら彼の声を聞いていると、催眠術に掛かってしまうような感じすらする。ちょっと怖くなって目をそらす。それ以来、こっそりと彼の前を通るようにしたら、彼はガクリと頭を動かし私の方を見ては、目の奥を赤く光らせている。

 近い将来、こんな感じのロボットが各家庭にも入っていくのだろうか。話し相手には良いかもしれないが、そんな環境が長く続くのは精神衛生上あまり良いことには思えない。あ、また別の人に話し掛けている。きっとまた目の奥を赤く光らせいているはずだ。愛嬌ある顔だからこその怖さがある。

(秀)