第213話 ■ものを買う心理

 ものを買いたいと思う欲望は、ずばり、「変身願望」である。1度に2本のクラブを振り回すことはないけれど、高いクラブ、良い(と言われている)クラブが欲しくなるのは、コレクターを除いて、そのクラブがあれば多少なりは上手くなりそうな気がするからに違いない。今までの自分とは違う自分への変身願望なのである。あなた方が欲しがる、服も指輪もバックも靴も、これらはもっと直接的かもしれない。ものを買いたくなるという心理は実は単純なのである。

 悲しいことにこれまでの私はまさにこのスタイルであった。「あのギタリストと同じあのギターを」。確かにそんな感じの音は出る。しかし、弾いている私は全然変身していない。「あの(カメラの)レンズを買えば、きっと作風が変わる(良い写真が撮れる)に違いない」、「あのパソコンは今持っているパソコンの二倍のパフォーマンスだ」、そんなことの繰り返しである。

 しかし、買いたいという心理が実際の購買といった活動に結実するには幾つかのハードルがある。まず第1は、お金。これに尽きる。ただ、これは単にお金のあるなしにとどまらず、買い手の値ゴロ感というものがある。「10万円なら買わないが、5万円なら買いたい」というやつである。第2は入手の可否。流通数量が極端に少なく、入手自体が困難な場合も想定される。そして、第3に他の欲しいものの存在ということになるだろう。これは何も同じカテゴリーだとは限らない。PCのライバルは海外旅行かもしれないし、最大のライバルは「やっぱり何も買わない」という結果であろう。

 さて、みなさんは買い物が変身願望で、それが一時的な麻薬でしかないことに今回気が付いてしまった。これから先、買い物するときのトーンや快楽がこれまでよりもちょっと鈍るかもしれない。すまん。更なる変身願望を満たすために、買い物に変わる新たな麻薬を見つけることができるだろうか?。今後、コラムでおいおい考えていくとしよう。かく言う「秀コラム」も自分の変身願望の一つとして始めたような気がする。