第222話 ■「これで、いいのだ」

 本棚の整理をしていたら、「天才バカボンの大神秘」という本が出て来た。ちょうど、「磯野家の謎」や「サザエさんの秘密」などの謎本が相次ぎ、その一連のブームの終り頃に出された本である。この本は数ある他の謎本が「○○研究会」などという形で、原作の著作者とは関係なく、しかも承諾もなく発行しているのとは一線を画していた。フジオプロ承諾の下、表紙にバカボンパパの絵があるし、中にも2ページに1点の割合で、原作のコマ(絵のこと)が使用されている。他の謎本は原作と見比べないと面白さが十分分からないが、この本はこの一冊でその面白さが納得できる構成となっている。

 本のサブタイトルには「バカボンのパパの知能指数は12500なのだ!?」とある。実はパパは天才だったのだ。ハジメちゃんのような天才が生まれる理由はここにあった。昔は、ハジメちゃんのようにパパも天才であったが、子供の頃のある日、くしゃみをした際に頭の中の歯車が外れたためにバカになってしまったらしい。これは原作の漫画での話で、私が記憶しているアニメでは馬に蹴飛ばされて、頭の歯車が外れてしまう内容だった。パパは生後二ヶ月で自動車の修理をしている。この状態を知能年齢二十歳として計算すると、知能指数は12500になると本では紹介している。

 天才バカボンはこれまでに4回、アニメ化されているが、やはり傑作は初回放送のものであろう。あの歌は今でも歌える。毎週番組最後の次週予告では、「見ないと死刑なのだ」と、今ではきっと許されないであろう大胆なことを言う。植木屋であるが、その前はいろいろと職を転々としたりといった話もあった。歌が得意で、のど自慢で優勝して電子レンジをもらったりもした。好きな食べ物はレバニラ炒め。不思議なレレレのおじさん。何発も弾を撃ちまくる、目の繋がったおまわりさん。いつもさんざん騒ぎを起こしておきながら、最後はいつもパパの同じ決め台詞である。「これで、いいのだ」。そう、「これで、いいのだ」。毎日がこんな台詞で終われるのならば、こんな幸せなことはないだろう。

参考書籍:「天才バカボンの大神秘」 バカ田大学後援会+フジオ・プロ 著

        KKベストセラーズ 1993年刊 本体951円