第241話 ■ライオンワオワオショー
田舎に住んでいると、芸能人に会うことなどまずない。耳鼻科の待合室で菅井きんが隣に座って来ることも(田園調布にて)、牧伸二の奥さんが近くのクリーニング屋にやって来ることもない(別に、奥さんは有名人でないけどね)。田舎では歌手のコンサートとなると、街中にポスターやステ看が現れ、街宣車が街に繰り出す始末。演歌歌手の営業となると、テレビでスポットCMが流れることもある。前回帰省したときには美川憲一のディナーショーというのが流れていた。静止画の金を掛けないトホホな内容だった。田舎で育つ最大の不幸はこれらを普通のことだと思ってしまうことである。地方紙に載っていることがこの世の全てだと錯覚してしまうことだ。
コンサートに来る歌手もご想像の通りである。全国ツアー50ヶ所。こんな感じの大ツアーでなければやって来ない。売れない頃は来てたのに、化けた途端に来なくなった歌手は限りない。そんなわけで、私が芸能人を初めて見たのは、「ライオンワオワオショー」であった。ふざけた名前であるが、確かこんな名前だったと思う。ライオン提供の歌手を呼んでのイベントである。私の住む街までやって来たところからすると、きっと全国規模で巡回しながら開催していたのだろう。洗剤とか歯磨きとかを買って応募するのか知らないが、姉がそのチケットを入手して、連れて行ってくれた。姉と言っても私とは11才も離れている。当時私は5才くらいだったと思う。小さくてチケットがいらないから連れて行ってくれたのかもしれない。
ワオワオショーは試供品の配布で始まった。いかにも販促イベントらしい。そして、いよいよ歌手の登場である。しかし、この部分の記憶がはっきりしない。唯一覚えているのは、にしきのあきらがいたことである。オールスター運動会では大活躍で、その当時はまさにスターだった。彼は「空に太陽がある限り」を歌った。
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