第247話 ■シンニュウ社員現る

 通勤途中に、見るからに新入社員といった人々を見掛ける季節だ。駅の改札などで新入社員だけ集まっているようなときは、とても目立つ集団である。彼らに色々と注文があるが、とりあえずは2点。挨拶はきちんとしよう。変な色シャツもまだ自粛するように。

 我が社にも50人足らずの新入社員が入社して来たようだが、これは我々の時代の10分の1から20分の1といった具合である。ここのところ数年はこんな感じで、我が部署に新人が配属されることはない。新入社員に接する機会はなかなかないが、自分が新入社員だったときを思い出して、彼らや後輩には出来るだけ親切に接しようと思っている。何も自分が親切にしてもらったからではない。私が新入社員のときの研修で、ある講師がこう言った。「私の退職金は、君達に掛かっている」と。働き盛りの後輩の稼ぎ具合で会社の業績は決まるし、退職金にも影響が出るから。「情けは人のためならず」。

 そんな彼らにようやく遭遇したのは、昼休みに社員食堂へ移動するエレベータで乗り合わせたときのこと。10人ぐらいのグループで、おじることなく、エレベータの中でも平気で話している。その中でも最も面白かったのは、本社での研修の際に隣の会社の社食に行って、うちの社食よりも数段うまかった、という話である。普通、新入社員はそんなことはしない。誰か先輩でも、彼らに知恵をつけたのか?。もし、彼らが自発的に他社に乗り込んだとすれば、きっと優秀なセールスマンになることだろう。これでは新入社員ではなく侵入社員である。ちなみに隣の会社の食堂には受付を通って、来客用のIDカードをもらわないとたどり着けない。