第300話 ■ズル休み

 このタイトルは何らかに理由でコラムの連載に穴が開いたときに、免罪符と使用しようとじっと温めていたものである。かつての第82話「あぶりだし」の様に本文は一切なし。だって、「ズル休み」だから。とりあえずこの手を使わなくとも300話に達した。300話書いたことよりも、これを平日日刊で続けたことに我ながら驚いている。最初はこんなにも続くとは思っていなかったが、ここまで来たからには400、500などとケチなことは言わず、1000話まで続けてみようかな、という気になっている。読者諸氏に改めて感謝するとともに、今後とも愛読を御願いします。もうすぐ本も出ることだし。

 さて、せっかくのズル休みと題したコラムの話を始めるとしよう。10年ぐらい前だと思うが、小泉今日子主演のドラマ(調べたところ、’93年 TBS「愛するということ」だった)に彼女の父親役として橋爪功が出ていた。彼はある会社の部長という設定だったと思う。そんな彼がある日、会社をズル休みした。小田急線でいつもとは反対の電車に乗って小田原に行ってしまう。その日一晩家を空け、翌日何事もなかったかのように彼は家に帰って来た。特に女性がらみということでなく、ふらりと衝動的に日々の喧騒から抜け出したかったようだ。

 このドラマを見て、彼の気持ちが良く分かった。しばしば、駅のホームに立って反対側のガラ空きの電車を見ると、このドラマの事を思い出す。ズル休みってどこか楽しいけれど、やはり後ろめたい。この嫌悪感が働いているうちはまだ大丈夫だと思う。たとえ無駄遣いしても、そのことを後悔する間はまだ大丈夫だと思えるのと同じように。

 ちょっとズル休みしてみようかな?、と思うことも何度かあったが、やはり心苦しくて毎日コラムを書き続けて来た。その結果の300話達成である。この300話のメルマガ配信とWebへのアップを遅らせたのは、せめてものズル休みのつもり。それでもやはり心苦しかった。まだ、連載は続けていけそうだ。