第32話 ■邦題

 これまでの名画と呼ばれる洋画には邦題の付いたものが多い。その中でも「風と共に去りぬ」というタイトルは日本語の文語体という、洋画とは一種反発しあうような要素がうまくおさまっている。「GONE WITH THE WIND」を「風と共に去った」ではあまりにも味気ない。「ぬ」は完了を表す助動詞である。「THE LONGEST DAY」を「史上最大の作戦」と訳すセンスも秀逸である。ただ、原題から外れた邦題もある。「卒業」は原題を訳すと「卒業生」となる。かと言って、「卒業」であれ、「卒業生」であれ、あの映画には別のタイトルを付けても良かったと思う。タイトルとストーリーの印象が直接的でない。「インターネット」は「THE NET」でしかないのに話題性に便乗してしまった例である。

 その一方で最近の洋画は原題をカタカナ表記しただけのものが多い。確かに「タイタニック」は訳しようがない。「ラスト・エンペラー」も「最後の皇帝」では雰囲気が壊れてしまう。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はどう訳すべきか?。「エイリアン」も「地球外生物」では恐くない。「レイン・マン」も変だし、「サタデー・ナイト・フィーバー」などは考えるだけで恐ろしくなる。

 国内での封切りが待たれる、最新の「スターウォーズ」であるが、20年程前の最初の国内での公開に際し、「宇宙大戦争」という邦題を準備していたらしい。神経を疑う。けど、中国では「宇宙大戦争」というタイトルで上映されているのかもしれない。「宇宙大戦争」。う~ん、何だかドラえもんの劇場アニメのタイトルみたいだ。