第320話 ■蝉
- 2000.08.07
- コラム
蝉の一生ははかない。じっと、7年間も土の中で耐えながら、成虫となって地上に出てきても、わずか1週間でその命はついえてしまう。そんな話を風呂で長男とした。「お前と同じ年だ」。長男は7歳である。感慨ぶかげに聞いているが、実のところ、長男は生き物が苦手である。犬は小さいものでもダメで、昆虫にも触ることが出来ない。
どこから飛んでくるのか、マンションの非常階段やベランダにひっくり返っている姿をよく見かける。なぜ、仰向けなんだろう。よく見ると、なるほどバルタン星人だ。生きてるものもいれば、既に死んでいることもある。かつては「とりもち」で取っていた蝉がいとも簡単に採集できる。たまたま地上に出てこれた蝉はまだ幸せだったろう。七年の間に地面がアスファルトで舗装されてしまった場合などは、あまりにも悲しい。文字通り、日の目を見ることが出来ない。
話は変わるが、ここ一週間あまり、家人が子供と実家に帰っている。別に喧嘩したわけではない。しばし、単身赴任の生活を強いられている。やはりなにかと不便だ。ゴミを出そうにも色々と分からないことが多い。ペットボトルの回収はキャップを外して出さなくてはならないようだ。しかし、そのキャップはどうやって捨てれば良いんだろう。それと、子供からに言いつけで毎朝花に水をあげなくてはならない。ベランダに出ると蝉が仰向けにひっくり返っている。拾い上げると既に死んでいるようだ。早速、妻の実家に電話する。「燃えるゴミの袋はどこ(にある)?。ところで、蝉って燃えるゴミかな?」。
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