第324話 ■ゆかたデー
- 2000.08.11
- コラム
通勤で新橋駅で乗り換えをしている。地下鉄からJR線へ。帰りの時刻がわりと早い時には、結構しっかりとメイクをした女性を見掛ける。そして、ちょっと良い感じの香水の匂いがする。ほんのごく僅かの可能性でこれから合コンに行く女性かもしれないが、やはり大部分は水商売のお姉さん達である。ご出勤の時間帯だ。いくら勝負を掛けた合コンでも、仕事帰りに背中がパックリと大きく開いた服を着て出かけるOLはいないだろう。一般人がやると、結婚披露宴の出席者みたいになってしまう。おそらく彼女達の勤め先は新橋駅近辺の店であろう。住所地番は銀座○丁目で「銀座でお勤め」なのかもしれないが、最寄り駅が新橋というところも多いはず。景気が良い時はタクシー通勤なのだろうが、このご時勢では電車通勤というのもやむなしか?。
そんなある日、いつものように私が新橋で地下鉄を降り、改札に向かう途中で数人の浴衣姿の女性を発見した。非常に品の良い浴衣である。すぐに、「今日は、ゆかたデーなんだ」と思った。平日夕方の新橋で浴衣、しかも品の良い浴衣、となると勘の良い殿方は誰しもが「ゆかたデー」であることに気が付くだろう。蛇足ながら、勘の悪い方(土地勘のない方も含む)やご婦人のために解説すると、新橋では週末であろうと平日であろうと、花火大会や盆踊りをはじめ、お祭りの類はない。それなのにわざわざこんな時間に(品の良い)浴衣を来て新橋駅で電車を降りるのは、やはり水商売関係者でしかあり得ない。しかも銀座の外れにあたる新橋ではお姉さんも楚々としていて、ガングロメッシュの花火見物浴衣とは雰囲気からして違う(ついで年齢層も)。
ここで、読者の中には幾つかの疑問が生じている人がいるかもしれない。ひとつは「ゆかたデー」って何?、ということ。これは店が日を決めて、ホステスのお姉さん達が全員浴衣姿で仕事をする日のことである。もちろん、常連客にはこの日が「ゆかたデー」であることは電話かなにかで連絡されている。この浴衣だけの理由で店に来る客もいるらしい。だからわざわざ、「ゆかたデー」なるものの存在意義があるというもんだ。そしてもうひとつの疑問が生じているとすれば、何故このような話を(秀)が知っているのか?、ということだろう。
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