第336話 ■転校生

 転校生は人気者である。それがいつまで続くのかは分からないが、瞬間的にはクラスの注目を集めることができる。新学期が始まった。教室では夏休み中のことでワイワイガヤガヤ。とりえずここは小学校なので夏休み中に急にデビュー(意味分かるよね)したような子はいない。「いつもより先生遅いなあ」、なんて思っていた時にクラスではお調子者で賑やかな友達が「転校生だ!、転校生だ」と駆け込んで来た。一斉に廊下に顔を出すと、先生の後ろに隠れてその姿は良く見えないが、明らかに子供の存在は確認できる。

 先生に連れられて来たのはやはり転校生だった。先生が黒板にその子の名前を大きく書く。「今度、お父さんの仕事の都合で転送して来た、・・・」。「お父さんの仕事の都合」。少年(秀)にとっては馴染みのない言葉であるが、この手の理由で転校して来る子は結構転校慣れしていたりする。休み時間にはその子を取り囲んで、早速質問タイムが始まる。こんな感じで転校してきた場合は人気者になれるが、それに引き換え、去っていく側への注目は、あっという間に衰退してしまう。まあ、別のところでは転校して来た側として扱われるから良いか。

 さて、本稿を読んであなたが思い出した転校生は今頃どうしているだろうか?。自分が転校した時のことを思い出した人もいるだろう。転校した場合は、夏休みの宿題とかやらなくて良いのかな?。