第36話 ■スティーブからのお告げ

 スティーブとはスティーブ・ルカサーのことである。アメリカのTOTOというバンドのギタリストである。約20年前にデビューしたバンドであるが、現役である。私が高校生のときにグラミー賞のアルバム賞やシングル賞などを総なめにした。先日彼らが来日した際に出演していた、深夜放送を目撃したが、彼もすっかりおじさんになっており、道ですれ違ったとしても気がつかないほどの変わり様であった。髭まで生やし、その風貌を分かり易く伝えるとすれば、「ムトゥー 踊るマハラジャ」のあの人のようになっていた。

 しかし、私にとっては神である。そしてその神が夢に現れ、私にお告げをしたのである。都合が良いことに英語を聞き取ることなどは不要である。日本語だったという記憶もないのでテレパシーでの会話だったような気がする。「私のオリジナルモデルの(エレキ)ギターを買え」という内容のお告げであった。目が覚めてから手掛かりを探そうにも困ってしまった。何しろ、15年ほど前に生産されたものである。きっと数も少ないことだろう。おぼろげな記憶で雑誌に出ていた広告のことしか覚えていない。幸いメーカーは分かっていたが、当時そのギターが幾らで販売されていたのかも分からない。第一、実物はおろか、その広告以外にその姿を見たことがないのだ。けど、神のお告げは守らねばならない。

 とりあえず、当時の音楽雑誌を古本屋にて探そうとした。目指すは「ロッキンf」。けど見つけることはできなかった。結局またインターネットに頼ることとなった。「また」というのはその数ヶ月前にも、ずっと欲しかったギターを見つけだし、手に入れていたのだ。結果、あっさり見つかってしまった。これも神の力か?。値段も5万円と無理ではない金額であった。まもなく送られて来た、スティーブ・ルカサーモデルのギターを手に神との約束が果たせ、しばらくは非常に楽しかった。夢での話は本当だが、私は神とかお告げとかのオカルティックなことは全く信じていない。単に思いつきで買いたい理由のこじつけだったようだ。この他にも同様の話でオスカー・バルナックという神様もいる。その話はまたの機会に。