第367話 ■スタア食堂

 ブラウザのブックマークの整理をやった。マシンやディスクが変わろうとも大事に引っ越して使用していたため、かなりのボリュームになっている。もっとも古いものは95年の登録だった。うまくカテゴリー別にフォルダに分類できれば良いだろうが、複数のカテゴリーをまたがるようなものをどうするかを悩んでいる内に挫折してしまうこともしばしば。ある時期に登録した内容は一気に「未整理」というフォルダに放り込んでおしまい。カテゴリー作りはセンスが問われる作業だ。

 今もそのURLでアクセスできるかを自動判別するソフトを走らせてみると、96、7年頃に登録したものはことごとく全滅であった。確かにそのサイトにはここ2、3年アクセスしていない。それに、この間にオリジナルドメインに変更になっているものも多かった。マスコミ関係のサイトでさえ、かつてはプロバイダーのドメインを使用していたことに改めて気が付く。そして、既にリンクが切れているサイトの一つに「スタア食堂」があった。

 スタア食堂とは95、6年頃に店にビデオカメラを仕掛けて、店の状況をホームページでリアルタイムに中継することで一時期話題になったところである。カメラからの映像の枠の下には「店長は俺達を監視しようとしているのか?」などと、洒落た店員の台詞があった。かつて同様に世界一有名なコーヒーポットというのがあった。カメラで撮影したコーヒーポットの静止画像がインターネットで公開されているただそれだけ。某研究室のもので、コーヒーポットが空になったかどうかを見に行くのが面倒なのでカメラを仕掛けて、それをWebで見ていたわけだ。このサイトを見に来て、コーヒーが残り少ないとわざわざメールで知らせてくれる人も結構いたそうだ。もちろん、私も当時そのページを見に行った。

 さて、スタア食堂の件であるが、馴染みの利用者から「店が空いてるか分かるから良い」という声が上がっていた。「会社の帰りに寄ろうかな?」、と思って店の混み具合が分かるわけだ。同僚が見つかるかもしれないし、同僚に見つかることもあるだろう。このシステムは床屋にあると便利だなあと思った。行ってみて、混んでいたから出直す、なんてことも結構多い。ただ、待っている間も緊張を強いられわけで、テレビ電話同様、技術的要素よりも心理的な要素が普及を妨げているようだ。検索エンジンで「スタア食堂」を検索すると確かにヒットするが、カメラ中継はもうやっていないようだった。