第369話 ■おかしも
- 2000.10.20
- コラム
うちの会社は週の途中に休みがあったりすると、その週の土曜日が出勤日となることがある。と言っても、多くの社員がこの日に有給休暇をあてて休むことが多く、通常は電話も鳴らずにかなり穏やかな1日となる。これがいつもの土曜出勤日なら。しかし、この日はその数日前から非常に慌ただしかった。この日は火災の避難訓練、しかもこのフロアが出火元に選ばれてしまったから。
部長が数日前にこの日の休みを宣言すると、「フロア隊長」の大任は副部長に回って来た。本来はフロア毎に自衛消防組織として、避難誘導班や初期消火班など決められているが、出勤している社員はいつもの4分の1程度であるため、自衛消防団は欠員だらけである。朝礼で臨時に若手社員を中心に配役の決められた。そして、総務部長をはじめ、スタッフが10時に現れ、下打ち合わせが始まった。
さて、いよいよ訓練開始。13:45を機して、総務部長の合図宜しく、あらかじめ決められていた若手社員が「火事だ!。火事だ」と叫ぶ。ちょっと照れているようだ。続いて通報係が総務、消防署、警備室の順に電話を掛ける。数分前からそわそわしていた我々に隊長から「まだ逃げなくて良い。放送を聞いてから」と指示が飛ぶ。放送が入ると午前中に休みを取って、このタイミングから出社して来た社員などは午前中の準備の盛り上がりも知らないまま、席に着く暇もなく、「逃げるぞ!」と連れ出されていった。
これから後の顛末はいつもの避難訓練と変わらないので、割愛。火元となった今回は自分自身何もやってはいないものの、家の近くで事件が起きたような感じで、逃げるまでのそわそわ感が最も印象深かった。それでも、せっかくなんで消防署員に教わったことを少々。「おさない、かけない、しゃべらない、もどらない」。それぞれ頭を取って、「おかしも」(「かけない」を「はしらない」にして、「おはしも」のケースもある)。小学校などでも教えているようだ。
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