第390話 ■加藤君の諦め

 政局の混乱は意外にもあっけない形で第一幕を閉じた。まさかの欠席。私の先日の第一幕の予想は外れてしまったし、今回の事態については全く予想できなかった。後付けのようで心苦しいが、自民党主流派が本会議決戦を口にした時点で、「不信任決議案の票読みが終わって、否決が確信できたのだなあ」と私は予想できた。主流派が非主流派の切り崩しに成功したのだと。そして、加藤、山崎両氏は除名、本会議で不信任案否決となるものと思っていた。

 当日の朝まで「100%勝つ」と豪語していた加藤氏の姿は何だったのだろう。帰りの電車の中でラジオを聞いていたら、加藤、山崎両氏の本会議欠席のニュースが8時50分頃に流れて来た。そして、その瞬間に離党や除名の処分が遅れていた理由にようやく察しがついた。突然の欠席について、加藤氏などは「不信任決議が可決する見通しが立たなかったから」としている。「名誉ある撤退」などとも言っているが、とんでもない。これで加藤氏が総理となる可能性は永遠に無くなった。第一、国民がそれを許さないだろう。それどころか、加藤派(「宏池会」)の分裂、派閥領袖の座からも追われかねない。結果、加藤氏は何一つ得た物はない。

 いずれの結果となるに至っても、ストーリーの展開を読む上で、自民党の性格を考えれば選択肢は自ずと狭まって来る。その性格とは政権与党であることにこだわり、固執することである。そのためには、現体制で政権をまわして、今解散総選挙をするべきでないと自民党は思っているわけである。とりあえずは森首相の首は繋がったわけであるが、加藤氏の支持低下とともに、自民党、森内閣の支持率低下も避けられない。さて、今臨時国会が会期を終えた12月1日以降に第二幕はあるのだろうか。きっと、あるにちがいない。