第402話 ■オーディション
芸能人の境目というのは結構グレーである。劇団の俳優さん達も売れてくればテレビにも出るが、そうでない人はずーっと劇場の舞台でしか活躍できない。その売れ出した俳優さんは、はたして芸能人なのだろうか?。ちなみにさんざんマスコミに露出している叶姉妹は芸能人ではないらしい。芸能プロダクションに所属していないから、というのが理由であったが、世の文化人の多くは芸能プロダクションには所属していないだろう。叶姉妹の場合は一般人ということで、マスコミなどでも「さん」の敬称付で名前が載るルールらしい。
さて、事務所に所属しているモデルや俳優さんの数というのはテレビや雑誌に出ている数の数倍(数十倍か?)に昇るに違いない。そんな人達と何度か販促用のビデオ制作で一緒に仕事をしたことがある。出演者を決めるにあたって、書類(+写真)選考とオーディションを行う。興味があって、余談で彼女達が月にどれくらいの日数働いているかを聞いたら、サラリーマン並みの日数であったことに驚いた。しかし、その半分以上はオーディションに割り当てていたりと毎日がギャラの入る仕事ではないことを知った。
彼女たちはオーディションの時間に遅れてきたりするが、それは同じ日に複数のオーディションをかけ持ちしていることなども理由で、別に時間にルーズなわけではない。制作サイドもそれは承知の上で、ただ素人のクライアントだけが事情が分からず、プリプリしている。よって、予定していたもう一名が「急に来られなくなりました」というのは、「前のオーディションで仕事が決まってしまいました」ということのようだが、そんな事情が分かったのは随分後になってからのことであった。
オーディションはまず撮影などの日程にあわせて、スケジュールが優先で事務所が候補者をピックアップして来る。たとえ暇が多い人でも、たまたまその撮影の日に別の仕事が決まっていれば、そのオーディションには参加できない。その日には10人ぐらいの人と会ったが、結局全員ダメにして、再度オーディションをやり直したこともある。制作サイドはスケジュールなどを理由に私を説得してくるが、ここはちゃぶ台をひっくり返した星一徹のごとく、クライアントの権限でオーディションのやり直しを命じた。
【次回へと続く】
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