第446話 ■節約の加減

 長引く不況の中、節約する人々を紹介するようなテレビ番組をたまに目にしたりする。まあ、それぞれいろいろと工夫をされている様は分かるし、面白おかしく+ためになる(気がする)番組として構成されているがどこかピントがぼけている気がする。NHKが放送するならまだしも、民放では番組の合間にバンバンCMは流れている。節約が美徳と言いながらも、購買意欲はしっかり煽っている。テレビ局自体はしたたかだ。

 節約の加減が普通のことではテレビが取り上げられないだろうことは分かるが、テレビに出て来る異常なまでの節約振りは実生活の参考になる度合を超えている。先日はサラリーマンが昼食代を抑えるために牛丼やマックに行列をなしている映像を流していた。確かにこのような店を利用する人は増えたかもしれない。しかし、彼らの大多数は毎日同じように行列をなしているわけではなく、適度にローテーションを行い、たまたまその日に行列に加わっていたに過ぎないはず。ある人は「毎月一〇万円の小遣いが二万円になった」とインタビューに答えていたが、一〇万円も二万円もあまりにも極端な話だ。

 家計をあずかる主婦として、スーパーのチラシを元に「底値表」を作るぐらいは許せる。しかし、ちまちまと電化製品のプラグをコンセントから抜いてまで光熱費の節約をしても、そんな金額は一日一本ジュースを飲んでしまえば吹き飛んでしまうに違いない。ましてやテレビで紹介されている、お湯を換えない風呂に連日(けど毎日沸かすことはないだろう)入るなんざ耐えられない。「底値表」を元に安売りのスーパーめがけて買い物に走るぐらいなら、その時間をパートにあてるなど、もっと有効に使う手段を考えた方が経済的にはうんとプラスになるに違いない。

 さて、そこまでしてお金を貯めてどうするか?、となると、「マイホーム」なんて言葉が聞えて来る。うまく頭金がたまり、念願のマイホームを手にしたと仮定しよう。ところがこれまでの光熱費の感覚ではせっかくの広い家でも一ヶ所に集まり、風呂は立て続けに(もちろんガス代の節約のため)何日も換えていないお湯につかっているかと思うとあまりにも悲しい。こうならないために節約生活をある程度緩和できる度合いを見込んで貯金をしておかねばならないわけだ。これは結構盲点のような気がする。

(秀)