第451話 ■稟議書
- 2001.02.23
- コラム
会社の中にはいろいろな手続き上の定型フォームがある。きっと、このフォーマットを決めたり、手続きの流れを決めることに情熱を傾けている総務部系の人がいるに違いない。かつて会社に結婚を報告する書類に仲人の印鑑を押す欄があって、たまげたことがある。もちろん、上司の印鑑ももらわねばならない。子供が生まれた時も上司の印鑑が必要であるが、証拠を見たわけでもない上司が印鑑を押すことにどれほどの効果があるのか疑問である。役所が発行した書類の方が信憑性が高いというのに。
というわけで、子供が生まれたため、上司の印鑑をもらうことになったときの話。あいにく課長は席を外していたので、先に部長に印鑑をもらおうとしたら、部長に怒られた。そもそも上司の印鑑をもらう意義が分からない書類であるため、上下の順を無視し、スタンプラリーのような印鑑の集め方をしたことに対して叱責を受けた。どうやら、部長は課長の印があるものに対して初めて印鑑を押すことにしているようだ。けど、とりあえず、お小言の後に部長の印を先にもらうことには成功した。
稟議書というのは決裁事項を順次持ち回りで決裁していくことで、対象者を一堂に集めることが必要ない点においては確かに合理的なシステムかもしれない。しかし、会社の上層部が都度上がって来る稟議書の委細まで承知しているとは到底思えない。社長は他の重役が印を押していることを担保に印を押している。その重役は部長が、部長は課長がそれぞれ印を押しているから、自分も印を押している。しかし、稟議書というのは、一旦印を押して上が承認していたとしても、いざ事が起こるとなると責任は順に上から下へ追求されるシステムなのである。
それに稟議書を書く前には関係部署などに根回しを終えていなければならない。そして、内諾を取り付けた上でそれを形あるものにするために稟議書を書く。そのために添付書類も揃えなければならない。こんな調子ではIT化が急速に進む中、意志決定が遅れてしまい、グローバルスタンダードでの競争では勝ち目がない。それなら、「意志決定の迅速化のために電子決裁システムを導入しましょう」と稟議書を書いている時点でもうダメだね。
(秀)
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