第517話 ■プッチン

 冷蔵庫を開けると、丁度目線の高さにプリンと茶碗蒸しが隣り合って並んでいる。プリンはグリコプッチンプリン、でかいやつ。きっと、子供のおやつなんだろう。茶碗蒸しはスーパーなどで100円ぐらいで売っている、出来合いのアレである。近々夕飯のおかずが寂しい時に温められて、食卓に登場することだろう。

 かつて、プッチンプリンの登場は衝撃的だった。そもそもそれまでのプリンというのは、ケーキ屋などで買って来るか(かと言って、そんな機会は滅多にない)、スーパーで売ってる、「ハウス プリン」のような粉末のプリンの素を買って自作するもので、スーパーの冷蔵庫の棚に、出来合いのプリンが並んでいた記憶はない(記憶がないだけかもしれないが)。それがプッチンプリンが登場するや大ヒットし、スーパーで他のメーカーのものも含めて出来合いプリンの陳列が始まった。

 プッチンプリンは国内のプリン普及におけるエポックメイキングな食品なのである。多くの人はあの「プッチン」機能を評価しているだろう。しかし、私としてはあの形をまず第一に誉めてあげたい。あのプリンの形も画期的だった。爪を折って、そこから空気が入るだけの簡単な仕組みであるが、取り出された見事な形、しかもカラメルが良い具合に載ったプリンを眺めて、喜んだものだ。

 ここで一つ私のアイデアを。グリコはモーニング娘。をポッキーのCMに使用しているので、そのままプッチモニをプッチンプリンのCMキャラクターに使用すれば良いと思う。プッチモニの略称「プッチ」を掛けて、コピーは「プッチもプッチン!」。ベタ過ぎるかな?。

 一方のカップ茶碗蒸しも、これまで家庭で自作する手間から考えれば、圧倒的に手軽で、茶碗蒸しが食卓に並ぶ回数を一気に押し上げたことだろう。これまた、画期的だった。いっそのこと、「プッチン茶碗蒸し」でも出れば、もっと世間は驚くだろう。プッチンして姿を現わした塊がほんのりと湯気を出しているのを見て、きっと子供達は大喜びだろう。あれーっ?、電子レンジから甘ったるい匂いがして来たぞ。茶碗蒸しだと思って手探りで冷蔵庫から取り出し、レンジに放り込んだのはプリンだったりして。

(秀)