第610話 ■カラオケの功績

 80年代のアイドルブームを思い起こすと、「粗製乱造」という言葉がぴったり当てはまる。嗜好の多様化にそんな形で応じようとしたため、泡沫アイドルとでも言うべき輩も輩出され、アイドル業界は自滅して行った。

 かつての彼らの曲を今聞き返してみると笑える。曲のアレンジが稚拙であり、音が薄い。技術的な要素ももちろんあるだろうが、こんな感じである。歌詞は時代を映すものであるため、比較してもしょうがないのだろうけど、今では使わない陳腐な、あるいは恥ずかしくなるような言葉が並んでいたりする。

 そして何より、歌手の歌があまりにも下手なケースが多い。「よくもまあ、これで」と思ってしまう。それに比べると今の歌手の方が歌はうまい。レコーディングの際に多少は機械で修正出来るようになったせいもあろうが、そこにはやはりカラオケの存在は大きいと思う。歌手になろうと思うからには、まず歌ってみるだろう。がんばって練習に励むことだろう。その結果として、底上げがなされたと思う。もちろん、聞く側の耳も肥えて来ているので、彼女(彼)達のハードルも高くなっていく。

(秀)