第630話 ■100円ショップ

 田舎に帰省したときの話。映画を見た帰りに街の様子を見て帰ることにした。市の中心部にある商店街は噂に聞いていたが、その衰退ぶりには驚いてしまった。付近の人口は以前からほとんど増えていないにも関わらず、市の中心部から離れたところにショッピングモールができ、駐車場のない従来の商店街では客がこの近郊ショッピングモールへと流れたためらしい。ショッピングモールと言っても、それはそれ、田舎での話であるので、あなたが思い浮かべた規模の半分にも満たないものかもしれない。

 商店街ではシャッターを降ろしたままの店もある。倒産したところもあれば、そこまでいかないものの空テナントになっている。そして次に目についたのは100円ショップだった。わずかばかりの商店街の中に実に4軒もあった。最も近いところだと、歩いて1分も掛からないところにある。以前こんな店はなかったのだから、元の店も潰れてしまったのだろう。

 100円ショップとなると、その安さ故に色々と余計なものまで買ってしまう。本当に欲しいものをきっかけに足を運んだところ、ちょっと気を緩めてしまうと、私の場合は2,000円コースとなってしまう。まあ、これで買い物による欲求のはけ口となるのならば安いものだ。

 買ってきたインクジェット用のプリンタ用紙を片づけながら、書棚で傾いた本に目が止まる。「そうだ、ブックエンド(を買うんだった)」。そう思うこと何度目か。ずいぶん長い間、この本たちは傾いたままで放置されている。「ついでのときにでも」、という気持ちが原因だろう。いざそれだけを買おうとして、その一点のみで店を出るのはなかなかできない。「せっかく来たんだから、ついでにこれも」、「(どうせ)100円だし」。巧みな心理をついた商売だと思う。さて、読者諸氏はどんな物を買っているのだろうか?。

(秀)