第631話 ■成長への疑問

 全くもって不思議なことだ。パソコンのパフォーマンスは日々格段にアップしているにも関わらず、仕事のテンポはほとんど変わっていない。就職した当時に比べれば収入も増えたはずだが、生活が楽になったという実感は湧かない。貯金も増えない。それどころか、最近は小遣いを減らされた。

 先日誕生日を迎えた「Y M」さんへ。

 ある時期から誕生日もうれしくないらしい。同感。しかし私の場合、単に歳を取るのが嫌だという理由ではなく、中途半端な年齢(第615話「やりたいこと」参照)で、ますます身動きがとれなくなりそうだからだ。誕生日と言うからには、とりあえず、無事に齢を重ねられたこと、とりわけ両親には感謝するべし。

 この一年で自分の成長が感じられなかったと言うあなた。しかし、この一年はあなたにとって何年分にも匹敵するであろう、充実した一年であったと私には見える。むしろうらやましく思える。

 と言いつつも、私も同じ様なことを考える時期がある。決まって春先のいわゆる「芽吹き時」になると、新たな新年度を前に、自分の成長に自問し、精神的に不安定になることがある。そして人恋しくなって、学生の頃は夜中にラブレターを書いてみたりした。今でこそラブレターは書かないが、やはりこの芽吹き時にはちょっとナーバスになってしまう。今なら日々の文章の訓練により、あの頃よりもずっとうまくラブレターも書けそうな気がする。私の成長もこんなもんかもしれない。

(秀)