第643話 ■ビン回収

 子供の頃、酒屋にジュースビンを持ってジュースを買いに行かされていた。(コカ・)コーラもその当時は500ミリリットル入りのホームサイズが最も大きなサイズで、その空きビンを両手に下げて、帰りには2本のコーラを提げて帰ってくる。ビンは1本10円の保証金があって、ビンを持っていくと、1本100円だったと思う。しばらくして、1リットルサイズが出た。こちらは保証金が30円、中身は150円だった。同じ様に空きビンを持って買いに行かされる。

 ところが最近こんなジュースをガラスビン入りで買うことはほとんどなくなった。ペットボトルばかりである。せっかくのガラスビンも回収なしで燃えない(資源)ゴミでしかない。そもそも酒屋が少なくなってしまった。コンビニやスーパーで買うようになった。ビンの回収が機能しなくなったのは流通が変わってしまったからであろう。空きビンの回収では、唯一ビールビンがうまくいっている様だが、これは酒屋や問屋といった流通システムが残っているためである。スーパーやコンビニとなると、面倒なので缶ビールばかりになる。それは元が酒屋であったコンビニでも同様。きっとあなたの家の冷蔵庫で冷えているビールも缶ビールのはず。

 ビール工場を見学に行ったことがあるが、彼らは資源のリサイクルという点には並々ならぬ努力を注いでいる。例えば、ビンの回収、再利用はその最たるものであるが、このためにビンの軽量化だけでなく、それを入れて運ぶ、ビールケースの軽量化もやっている。回収しても使えないほど損傷のあるビンもきちんと再生している。ガラスビンがペットボトルになってしまったのはその方がコスト的に優位なのだろうか?、流通形態が変わって、回収する仕組みが機能できなくなったからであろうか?。ペットボトル入りのビールは見たくないなあ。

 やることが皆中途半端だ。「環境」と耳あたりの良い言葉を使用するために、買い物袋の削減や牛乳パックの回収をやっているスーパーはあるが、その回収率は全体に比べれば、ほんのわずかでしかない。毎日それより遙かに多くのペットボトルと缶を売っている。いっそのことペットボトルも空き缶も保証金(デポジット)制にして、回収して再使用(リユース)できなくても、原材料として(リサイクル)できるようにするべきだ。資源の有効利用だけでなく、ゴミも減る。理想も所詮は銭がないと回らない、というのが現実のようだ。

(秀)