第672話 ■パンと牛乳

 実のところ、ここ数日体調が優れず、会社を休んで寝込んだりしていた。病院に行くと、逆にもらってひどくなるかもしれないので、家でじっとしている。ぼんやり天井なんか眺めていたら、いろいろと子供のときのことを思い出した。

 共働きなので、学校を休むと親兄弟も皆出かけ、一人で寝かされていた。病状はそれほど深刻なことはない。いつものように、テレビでおはようこどもショーからカリキュラマシーンを見てからは、NHK教育にチャンネルを切り替え、学年などおかまいなく、次々に流れてくる「○年生の理科」や「はたらくおじさん」などを見る。結構、面白かったりする。しかし、次第に子供が見る番組がなくなってしまう頃から退屈になってくる。何度も読んだはずのマンガをペラペラとめくってみたり。

 学校が終わる頃になると、「あら、不思議!?」、病気が直ったような気がした。しばらくすると、近所の子が帰りがけに給食のパンと宿題のプリントを届けてくれる。この届けものをすると、お礼におやつをくれるようなところには、このお休みセットを持って行きたがる人が増え、競争率が上がる。「それなら、一緒に」と、先生がうまくおさめてみたところで、先方にはあげるおやつの量が増えてしまって、迷惑なことだろう。いや、一人あたりの分け前が単に減らされているだけか?。とりあえず、私の場合は何もあげない。

 具合が悪くなると、決まって父親が「(明日は)パンと牛乳か?」と言う。「病気=パンと牛乳」である。それで実際にパンと牛乳とともに一日中一人で置き去りにされていたわけではないが、このフレーズだけは妙に覚えている。今となって、我が子が具合の悪いときに、「パンと牛乳か?」、なんて言ってみるが、そんなもの通用しない。けど、それでも良い。会社が終わる頃になると、ちょっと元気が回復してきた。

(秀)