第68話 ■複製

 最近は音楽CDからCD(正しくはCD-Rであるが)に音楽を録音できるようになった。曲を選んで、まるでテープやMDのように録音できるのである。パソコンではCD-Rのドライブさえあれば随分当たり前の話であるが、家電でオーディオ専用のCD-Rデッキが発売された。ディスク丸ごともコピーできるが、それはパソコンのディスクコピーとは違い、ディスクの全曲をダビングしたにすぎない。ただ、好きな曲順に入れ替えて録音できるのである。レンタル屋等で借りたCDからCD-Rにコピーする輩が出て来ることだろう。それを見越してか、デッキ自体のレンタルも始めていたりする。

 最近の著作権の解釈では、「個人的な使用の範囲」であれば複製をしても良いことになっている。しかし、複製ではなく原盤であったにしても私的範囲を越えての使用は禁じられている。例えば、喫茶店でCDなどの音楽を掛けることは、それが原盤であっても著作権法では制限されている。ここで言う制限とは、「権利者の承諾を受ければOK」という意味である。よって、手持ちのCD等の音楽ソースは原盤、複製のいずれに関わらず、個人的な範囲で聞くことしか認められていない。

 となると原盤と複製の権利上の違いは、それを他人に譲渡できるか?、ということになる。中古になるが原盤は人に売ることはできる。複製品は販売どころか譲渡すら処罰の対象になる。利益を得たかどうかが問題ではなく、オリジナルの販売に影響を与えたかという点で判断される。昔よくやっていた、他人にダビングしてもらうというのはペケだ。

 今回の専用デッキによるCDからCD-Rへのコピーであるが、全く同じものができるわけではない。なぜなら、この両デッキ間の接続はアナログのままだからである。実際に聞き分けられるかどうかは別として、両方のディスクのデジタル信号を比較してみるとイコールにはならない。最近の著作権をめぐる関心事はデジタル→デジタルの複製である。現在民生用で唯一認められているのは、MDだけである(DATのことはよく分からない)。しかし、MDはデータを圧縮して記録し、再生時に解凍しているため、多少データを間引いており、クローンというわけではない。しかも、それは一世代のみで、MD→MDの複製は一旦アナログを経由した形で行われている。