第715話 ■東京必要クラブ

 この組織の詳細は謎である。分かっていることは、自分が世の中に必要ないんじゃないのか、そう思ってる人に「必要」を与えてくれるクラブで、そこには「必要をもらう人」と「必要をもらう人が必要な人」が集まってくることだけ。そこで彼女は飯島という見ず知らずの女性から、「あるビルに引っ越して、そこの窓際で毎日午後一時にゴリラの真似をしてほしい」との依頼を受ける。このために飯島という女性はマンションの引越し費用を負担してくれた。毎月依頼者から「ありがとう」って手紙をもらって、彼女は些細なことでありながらも自分が必要とされていることに喜びを感じ、今日もドンドンと両手で胸を叩き、威嚇のポーズをとってゴリラ女を演じている。

 これは毎週火曜日の22:54からフジテレビで放送されている、「出会いのストーリー」という番組での話である(全国放送ではないかも)。1分あまりの一話完結のショートショートがストーリーの朗読(今月は、ともさかりえ)と、映像で展開される。もちろん、フィクション。スポンサーはJT(日本たばこ産業)で、まるで一服のようにホッと癒されるショートショートドラマだ。

 たまたまそのゴリラ女の姿を向かいのビルから見ていた男性も、その彼女の姿を見て癒される。というのは、先週の話の後半部分で、ゴリラ女の回への前週からの伏線だった。この巧みさもたまらない。私もこんなストーリーが書けるようになりたいと願う。

 「東京必要クラブ」。ドラマの映像ではインターネットのサイトの画面が出てきたので、早速インターネットの検索エンジンで探してみたが、あいにくヒットはしなかった。こんな洒落の利いた組織やサイトが実際には必要とされていると思えるのだが。そう言えば、彼女が「入会方法?秘密です」、と言っていた。

「出会いのストーリー」のサイト:http://www.fujitv.co.jp/deai/

(秀)