第513話 ■コレクション道

 私のコラムの心の師は泉麻人氏である。勝手な思い込みにすぎないが。氏のコラム本に「コラム百貨店」というのがあって、それにあやかり「コラムのデパート」という冠を付けた次第である。これまた、勝手な思いでしかない。

 氏の最近の新刊文庫本に「東京、10の短編とちょっとした観光案内(朝日文庫)」という短編小説集がある。文字通り、彼が得意とする東京の地理の情報を舞台にした短編小説が10編納められているが、その中の一編にヴィンテージジーンズをコレクションしている青年を主人公とした話がある。主人公が自分のジーンズに関する知識をホームページを公開しているという設定で、うんちくが披露されている。新品のジーンズを良い感じに脱色させ、ヴィンテージ感を出すための方法、”育て方”が綴られている。「アタリ」や「ヒゲ」といった、コレクターにしか分からないような用語が説明を折り混ぜながら出て来る。

 さて、前振りが長すぎたが、本稿のテーマはコレクションである。コレクションの中では、未使用や完品という美品狙いで成り立っているものがある。これは傍目にも分かりやすい。ところがヴィンテージジーンズのように、一見汚く、穿き古したようなものに価値を与えている分野もある。これは外の人間には非常に分かりにくい。浜崎あゆみも自ら穿き古して、ベストジーニストの称号を得るに至っているのだろうか?。

 コレクションには多大な金と暇が必要である。しかし、メジャーな分野のコレクションはほとんど金しだいというものが多い。メジャーなためマーケットがあり、総じて値付けされているわけだ。ここで大いなる疑問が生じる。金さえあれば、コレクターとして優れているのか?、知識さえあればコレクターとして優れているのか?。知識は単に本からの受け売りかもしれない。技術がないのにモノを持っていれば、コレクターとして優れているのか?。

  (次号へ続く)

(秀)