第720話 ■もう1つの選択肢
- 2002.03.20
- コラム
私が初めてエレキギターを買ったのは高校1年の秋だった。あらかじめ断っておくが、今回の話はエレキギターのことが分からない人には面白くないかもしれない。それでも最後の教訓のところまで読んで欲しい。
その初めて買ったエレキギターとは、「フェンダージャパン ストラトキャスター ’57年モデル」というやつで、色はキャンディアップルレッド(メタリックレッド)である。定価が6万5千円だった。実はこのギターともう1本のメーカーの異なる同じモデル、しかも同じ価格帯のものとどっちにしようか迷っていた。本当は数日前までもう一方の方を買う予定であった。ところが、「フェンダーが国産モデルを発売する」という情報をキャッチしてしまった。
その情報から数日後、通い始めていた楽器屋に件の赤い「フェンダージャパン ストラトキャスター ’57年モデル」が入荷され(てしまっ)た。ヘッドに書かれている「Fender」のロゴは友達が持っているものとは違っていたが、「これは昔のロゴでそこまで復刻してあるんだ」との話を聞いて私の心は大きくなびいた。日本製だろうと、フェンダーはFenderなのである。やはりFenderロゴは無敵だ。
いよいよ現金を握りしめ、ギターを買いに行った日、それでもスタジオで友達に弾いてもらって実際に音出しをしてどちらにするかを決めることにした。フェンダージャパンはピックアップがUSA製というのが売りだ。もう一方の国産モデルのものとはパワーが違う。音の伸びも良い。雌雄は決した。
このときもう一方の候補となったギターは「Tokai ストラトキャスターモデルLimited」、定価7万円。その名の通り、限定モデルでブリッジやボリュームつまみなどはブラス(真鍮)というちょっとした豪華仕様だった。ヘッド表面もボディと同じメタリックレッドで着色されていた。ヘッドの着色とゴールドパーツというのは当時の「フェンダー ザ・ストラト」と同じだ。
あのときフェンダージャパンのストラトを買ったのは楽器の出来から判断するに正しかっただろう。しかし、あのトーカイの限定ストラトモデルはあの時期に限定的に作られただけで、あの時期を外して購入することが出来ない代物だ。こんな読みが出来ていたら、多少音がテケテケでも迷わずトーカイの方を買っていただろう。さてさてここで教訓。「そのときの正しい選択が20年後も正しいとは限らない」。時計探しが終わった今、次なる目標はこのギターか?。今度の難易度は相当高そうだ。
(秀)
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