第729話 ■ジャングル黒べえ

 知る人ぞ知る、と言うべきか、このマンガを知っている人はおそらく30代。再放送で見たと言う人も20代の後半だと思う。最初のテレビ放送は資料によると昭和48年3月からの半年間とある。確かにその頃だったと私の記憶とも一致している。余談だが、この頃にはドラえもんも日本テレビで半年間放送されていた。これまた、知る人ぞ知ると言うべき、ドラえもんの初アニメ放送である。「ドラえもん(旧)」として、今も続いているドラえもんアニメとは区別して呼ばれている。さすがのドラえもんもこのときは苦戦していた。

 話を元に戻そう。「ジャングル黒べえ」は藤子不二夫(F)氏のマンガでありながら、人種問題のためにテレビでは再放送されないし、コミック本も絶版となってしまっているため、その存在を知る人が少ないわけである。ストーリー自体は特に差別的なものはないが、主人公が黒人というだけでこの始末である。黒べえはアフリカ・コンゴ盆地の奥深くにあるという伝説の国・ピリミーの大酋長の息子で魔法使い、という設定であった。私が記憶している、最も新しい再放送は昭和55年頃だったと思う。

 現在、この黒べえを見るには「藤子不二雄ランド・ジャングル黒べえ(昭和63年1月初版)」というコミック本と「てんとう虫コミックス バケルくん第2巻(昭和53年初版)」(バケルくんは「月曜ドラマランド」で実写ドラマにはなったが、アニメにはとうとうならなかった)、それに「藤子まんがヒーロー全員集合(初版のみ)」など5冊を見つけ出すしかない。いずれも絶版である。「藤子不二雄ランド」シリーズは、いろいろな雑誌(「○年生」のような学年別学習雑誌が中心)などに発表した作品を再掲したもの(一部は原稿が見つからず、印刷物からの復刻)だった。しかしこの本も発行の同年8月に回収となっていた。

 以上のような状況のために、特に「藤子不二雄ランド・ジャングル黒べえ」は高値で、ネットオークションでも状態が良ければ2、3万円もの高額で取引されている。ところが最近運良く、「藤子不二雄ランド・ジャングル黒べえ」を近くの古本屋で手に入れることができた。日焼けしていて状態はあまり良くないが、1,800円という値札を見たときには心臓はドキドキし、小躍りしてしまった。

(秀)