第828話 ■日本ハムの詐欺事件について

 日本ハムの詐欺事件のごたごたが話題の最中、日本で5頭目の狂牛病感染牛が見つかった。「BSE」なんて、何の訳語か分からないような言葉で惑わせることなく、私は狂牛病と記す。何か手がうたれて安全が確認されたわけでもなく、ただ何となく牛肉を食べる生活に戻っていた。そんなタイミングでこの報道である。日本ハムの詐欺事件など、悪いことであるのは間違いないが、それで人々の生命や健康が脅かされるものではない。根本の狂牛病の対策、解決ができていないことをもっと騒ぐべきだ。そもそも狂牛病の騒ぎがなければ、このような詐欺事件が起きる舞台はなかった。

 日本ハムの先日の会見での内容が不十分だと腹を立てている人もいるだろう。会長が名誉会長になり、社長が専務に。これに対し、農水相が怒っていたが、そんな詐欺をみすみす逃すような制度を作って運用している側の責任はどうなんだ、と問いたい。所詮、民間企業の人事のことで政府もまた一般市民もこれに対してあれこれ口出しする資格はない。その権利があるのは同社の株主だけ。不満のある消費者はその会社の商品を買わなければ良い。そんなことより今回の詐欺事件が会社の指示によるものか、各営業部長の判断かを徹底的に調査し、会社の関与が認められれば、その当事者あるいは責任者を刑事事件として立件するのが筋である。いっそ、名誉会長ではなく、「不名誉会長」にすれば良かったかも。

 企業の役員は株主に対する責任を負っている。これは法的にそう決められている。一方、企業が社会に対して貢献はしたいと思っていようと、それは企業が勝手に思っているだけのことで、法的な義務・責任はない。ただ消費者に対する責任をまっとうできない企業は淘汰される市場のメカニズムは存在している。だから企業はこれを恐れている。

 責任問題を感情論だけで始末してはならない。役員を辞めたことなどで責任を取ったことになり、しばらくすれば許されるような雰囲気はいけない。詐欺は刑事事件なので司直の手により、きちんと始末されればよい。記者会見が裁きの場ではなく、頭を下げ、涙を見せたくらいで全てが終わったように思ってはいけない。ところで農水省は雪印食品のときから再発を防止するような手立ても取らず、何やってんだろう?。

(秀)