第747話 ■電子レンジ

 台所から焦げ臭いにおいがする。何事かと聞けば、「レンジを使っていたら、煙が出た」とのこと。確かに食べ物の匂いではなく、機械の焼け焦げた匂いだ。普通ならここで私が機械のチェックをみたりするのだが、今度に限っては「爆発するかも知れないからやめて」と言われ、「そんな馬鹿な」と思いながらも、異常な電磁波を受けて巨大化したり、タイムスリップしてはいけないので、その忠告に従い、あえなくそのオーブンレンジはそのまま廃棄されることになった。5、6年くらい使ったであろうか?。

 バカボンパパは非常に歌がうまい。本業の植木屋で植木を刈りながらも木の上で歌の練習に余念がない。ママが電子レンジを欲しがっていて、それが賞品となっているお祭りでののど自慢に出るためだ。最初にアニメ化された天才バカボンでこんな話の回があった。ライバルは「悪魔が憎い」(30代後半以上の人じゃないと分からないと思う)という曲を練習していた。このライバルの妨害で怪我をさせられ出場が危ぶまれたパパだったが、ステージで北島三郎の「仁義」を熱唱し、見事優勝賞品の電子レンジを手にするのであった。しかし、ママが電子レンジで作ったのは焼き芋(ふかし芋)で、「わしはレバニラ炒めの方が良いのだ」と言って、その回の話は終わる。

 一方、我が家のレンジであるが、スーパーに新しいものを買いに行ったら、意外に安くてほっとした。先進の機能を備えた機種は確かに高いが、基本的な単機能に特化したものはほとんどが2万円以下である。かつて電子レンジという言葉を聞き始めた頃は家庭用で10万円ほどの値段だったと思う。今の値段で考えれば20万円以上だろう。前述のバカボンの中でも8万円だった。技術革新の効果に感謝。のど自慢に出るわけにも行かず、「ボーナス払いで」とカードを取り出し、台数限定で売り出し中の最も安い奴を買い求めた。

(秀)