第830話 ■サングラスと腕時計のおもちゃ

 サングラスと腕時計。これは大人の持ち物である、と子供の目には見えた。だから触ってみたいという衝動に駆られる。大人たちはそれを守るため子供の手から遠ざけ、その代替として、駄菓子屋の壁にこれらのおもちゃが並んでいるのだろうか?。

 当時のおもちゃのサングラスは月光仮面の影響だろう。白いフレームに青または緑の薄いプラスチックのレンズがはめられている。ふざけてレンズをかたっぽだけ外したり、フレームだけにしたり。かたっぽずつ違う色のレンズを付けて頭がクラクラなりながらふざけたこともある。10円とか20円ぐらいだっただろうか?。やがてそれはおもちゃ箱の隅に隠れたまま、ある日またあたらしいサングラスを買ってしまう。フィンガー5が流行ったときには、でっかい丸い「トンボメガネ」も買った。

 それと時計である。大人の腕に巻かれているあの機械にもあこがれた。駄菓子屋で売っているそれは、竜頭を回すと時計の針は動くものの、時針と分針はいつも同じ角度を保ったまま、文字盤の上を追いかけっこしているだけ。やはり子供としては3時にあわせておくことが多かった。時計は読めなくてもこの3時だけは誰もが最初に覚えた。派手派手しいゴムのバンドが目印で、その色は男の子が水色か青、女の子が赤かピンク。ほとんどの子供がそのバンドを右腕に付けていた。手首にはゴムの跡が残る。

 サングラスを掛け、腕時計を付けると何か大人びた感じがして、自然と両手を腰にポーズを取ってしまう。そして、何故か銀玉鉄砲を持っている。さらに日によっては風呂敷マント。けど、そんな大人はいない。こんな生意気な子供はやがて大きくなり、それを懐かしみながらこうしてコラムを書いている。

(秀)