第882話 ■北の宿から

 連日の拉致被害者の日本での生活ぶりの報道も徐々にトーンダウンしていっているが、彼らの帰国以来、この問題に関して進展がほとんどないのも事実だ。薄情なもので、人々の関心も薄れ、マスコミなどの取り上げ方も小さくなっていく。まあ、逆に一時期が異常過ぎたというのが正しいかもしれないが。

 テレビで彼らを見て、「まるで皇族のようだなあ」と思った。絶えず人が付きまとい、行動や生活ぶりが報道される。帰国直後は、蓮池さんが「温泉に行きたい」と言った。かつての旧友とキャッチボールをした。曽我さんがキティちゃんを知らなかった、など。まさにどうでも良いようなことまで、新聞では大きな見出しとなって報じていた。最近でもテレビでは、「今日の拉致被害者」などというテロップとともに、今日はどこどこに観光に出かけた、とやっている。

 そんな中、私が大して関心も払わずに、忘れ去ろうとした一連の報道の中で、今考えてみると大変なものがあった。浜本(現・地村)さんが同窓会でカラオケを歌ったという記事だ。「あなた変わりはないですか♪」と歌い出すと、会場はしんみりとした雰囲気に包まれたそうだが、この曲のタイトルは「北の宿から」。おいおい。まさか本人が狙って歌ったわけではなかろうが、選曲の段階で既にオチがついている。では報道した側はどうだったのであろうか?。まさかマスコミも狙って取り上げたわけではなかろうが、ちょっとその気持ちがあったのなら、とりあえず私は気が付いたよ。2番の歌詞は特につらいね。

(秀)