第885話 ■市議会議員選挙

 ここ数日、通勤の行き帰り、駅が騒がしかった。今週日曜日に投票が行われた松戸市議会議員選挙のためだ。駅のロータリーでは候補者の各宣伝カーが路駐されている。また、その前後の車も運動員の運搬用かもしれない。候補者名を染め抜いたのぼりを持った様はなるほど桃太郎だ。のぼりを持って商店街などを候補者や運動員が練り歩くことを「桃太郎」と言うらしい。投開票が終わり、ようやく駅頭はいつもの平静をとりもどしつつある。

 小学生のとき、家の隣が市議会議員選挙の選挙事務所になったことがある。朝七時になると、きっかりに街宣カーが出発する。その音で目を覚ます。街宣カーが他陣営の事務所前を通る時や街宣カー同士がすれ違うときには、「○○候補のご健闘をお祈りします。一緒にがんばりましょう」などと、どこまで真剣にそう思っているのか誠に疑わしい、空々しいウグイス嬢の声が飛び交う。「○○(候補者名)、ただいま戻って参りました」、「○○、行って参ります」という声が食事の時間などを挟んで夜八時まで何度となく聞こえてきた。

 かつてはあんなのぼりなんかなかった。運動員のユニホームもなく、背広を着てたすきを掛け、手には白手袋の候補者は遠目に見てもすぐにそれと分かったものだ。市議会議員(候補)程度のオヤジにオーラを感じることはないが、きちんと櫛で分け目をつけた整髪剤の匂いを感じた。子供の目から見ても、普段会ったときとはやはり別の顔に見えた。ところが最近のように運動員が揃いのジャンバーなどに身を包み、候補者も同じ格好をしていると、候補者かどうか分からなくなる。

 街宣カーやポスターによる選挙運動の成果がどれぐらいのものか、私には疑わしい。その姿を見て、名前を耳にした程度で投票しようという気にはまずならない。握手をしたところで同様。所詮は人脈選挙ということだろう。特に地方選挙は。その運動員を動かすために候補者は神輿である街宣カーに乗って、街を練り歩く(走る)。握手して票が入るとも、手を振って票が増えるとも候補者自身思っていないかもしれないが、そのパフォーマンスにあわせて運動員が踊る。候補者本人はさておき、応援している人々は四年に一度の祭りとして楽しんでいるような。田舎の方が結束も固く、盛り上がるのは祭りと同様。そして投票が終わった。万歳の歓呼の後、祭りの終わりの静けさ。落ちた人には後の祭り。

(秀)