第135話 ■オネストジョン

 駄菓子屋と言っても、何も楽しみはお菓子ばかりではない。チープなおもちゃ、駄玩具と呼ぼう、も楽しみの一つだった。自分の場合、どちらかというとお菓子よりもおもちゃにお金を使っていたような気がする。最近の駄菓子屋では駄玩具の扱いが少なくなっていて寂しい。もちろん、駄菓子屋自体が少なくなってしまったのはもっと寂しい。

 「鉄砲ごっこ」という遊びもよくやったが、この場合の鉄砲は主に2つに別れる。1つは銀玉鉄砲で、もう一つは火薬鉄砲である。銀玉鉄砲は確か50円から100円くらいで、銀玉が10円、小さな赤い箱で売られていた。壁の上の方には200円ぐらいの高価な銀玉鉄砲が吊るされているが、これには「200連発」とキャッチコピーが付いて、銃上部の銀玉を入れる口の上に200発分の玉を入れる円盤上のカートリッジが付いていた。この銀玉鉄砲の弱点は音が出ないことである。だから口々に「バン、バン」と言わなければならない。それと、無尽蔵に玉を買い続けるわけにもいかないので、途中休憩を入れて玉を拾うのだが、この姿はやはり格好悪い。

 音が出る鉄砲となると火薬鉄砲である。火薬鉄砲は銀玉鉄砲に比べると成形も無骨なチープな感じのものがほとんどだった。この火薬を僕らは「ふじだま」と呼んでいたが、シート状にミシン目が入ったものと、幅8ミリばかりの紙に等間隔に火薬が配置され、それを巻いたものがあった。色は赤である。火薬鉄砲は主に後者を使用する。しかし、今度は玉が出ない。確かに銀玉と火薬の両方を使用する銃も発売された(但し、高価すぎて駄菓子屋には置いていない)が、銀玉と火薬の両方が消耗品であり、コスト高のためか流行ることはなかった。

 一方ミシン目の入った方の火薬は平玉鉄砲という単発式の火薬鉄砲で使用することもあったが、それ以上に「オネストジョン」に使用した。聞き慣れない名前かもしれないが、おそらく誰もが見たことあるだろう。プラスティックのロケットの形をしている。先端部分に火薬を詰め、落下させたり、壁にぶつけて音を出すだけの単純なもので、何が面白かったのかは、よく分からない。当時もそうだったかもしれない。それが子供の遊びの本質のような気がする。