第1875話 ■地下鉄

 娘が小学生の時に地下鉄の絵を描いて、努力賞とか言う参加賞に毛が生えた程度の賞をもらったことがある。確か「東京メトロ」主催のコンテストに、学校からみんなで出品したものだったと記憶している。話を聞いてみると、松戸駅のホームの絵を描いたと言うが、どうもピンと来ない。数日後に戻ってきた絵を見たら、普通にいつも見慣れた、電車の停まった松戸駅のホームの拙い絵だった。

 松戸駅は地上にある。地下を走っている車両も駅舎もない。ただ、常磐線の各駅停車の電車として、地下鉄千代田線が通っている。北千住から東は地上を走っていて、第一、毎日自室の窓から高架を走る車両の様子を見ていたため、地下鉄であるという意識が私の中から飛んでしまっていた。

 30年超前かと思うが、地下鉄漫才というのがちょっと流行った。「地下鉄の電車はどこから入れたんでしょうね。また今晩眠れなくなっちゃう」というお決まりの台詞が受けていた。私は地下鉄など地元にない田舎に住んでいたので、「言われてみるとそうだな」と、このボケを面白がっていたけれども、上京してみると、なんてことはない。渋谷なんか地下鉄銀座線が山手線なんかよりも上を走っている。この他にも、地上も走っている地下鉄の路線は数多い。

 これは上京者泣かせだ。事前に調べていた情報によると、渋谷で「地下鉄銀座線」へ乗り換える、とある。山手線の改札を抜けて、キョロキョロと周りを見渡して、「地下鉄銀座線」という看板を見つけられるならばラッキー。「地下鉄なのに?」と思いながらも、階段を登れば正しい改札が待っている。しかし敢えて、田舎者を悟られないように、脇目をも降らずに階段を降りて行ったら、そこに「地下鉄銀座線」はない。さて大慌てだ!。とりあえずそれでも地下鉄の入口を探して、東京急行の入り口へと入ってしまったとしたら?!。

 ところで、どうしてあの地下鉄漫才は受けたんだろうか?。東京に住む人になんか可笑しくも何ともなく、当時から地上を走る地下鉄はあったはず。それなのに何故、東京キー局のテレビで放送してたんだろう?。当時の東京の人々はこの漫才を面白いと思っていたのだろうか?。まあ、そんなことを考えても、自分は迷わず、じっくり眠るけどね。

(秀)