第752話 ■量刑不当

 かねてより経済犯罪の刑罰は軽いと思っていた。例えば詐欺で億単位の金をせしめてそれを使い込んでしまおうと数年間の刑務所暮らしで済まされる。被害者が訴えようともまっとうな方法で億単位の金を弁済できるはずもなく、そうなると法的な仕置きはこれ以上のことは出来ない。実力で制裁を加えた「豊田商事永野会長刺殺事件」のことを思い出す。ところで、あのときの犯人はどうなったのだろうか?。

 一般的な詐欺事件は自分が被害者でなければ腹も立たないが、公務員が不正に税金を着服していたとなると納税者として私自身も被害者の一人である。昨年の初めに検挙された外務省の松尾前室長の機密費横領事件はその額約2億円に対し、懲役7年6ヶ月の実刑判決となった。2億円というのは一般サラリーマンが一生掛かって稼ぎ出す平均生涯賃金と同額である。しかも、これは税込み金額。無税の上、マンションを買った際の利息などを考えると、その実質的な価値は2倍以上はあるだろう。これほどの額を詐取しておきながらて懲役7年6ヶ月でしかない。

 そして、それからまもなくして発覚した外務省のもう一つの事件。95年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、ホテル代を水増しして公金計4億2,200万円をだまし取った元課長補佐に対し、今日東京地裁で一審判決が言い渡された。その内容は懲役2年。被害額が戻ったとか、個人的に使い込んだ約3,000万円を弁済したからと言え、これだけの詐欺行為に対しわずか懲役2年の判決でしかない。これではやっぱり被害者の一人として納得行かない。

 それどころかもっと腹の立つニュースが伝わってきた。何とこの懲役2年の判決を受けた元課長補佐の被告がこの量刑を不服として東京高裁に控訴しやがった。執行猶予が欲しいのだろう。盗人猛々しいにもほどがある。「量刑不当」と言うのはこっちの方だ。

(秀)