第2026話 ■今さらのカセットテープ

 妻の実家にかつてのカセットテープと本などを少々預けていたようだ。上京の際に本や雑誌、カセットテープの大半は処分したのだが、そのうちから捨てるに惜しいものを箱に詰めて預かってもらっていたようで、しかしそんなことなどすっかり忘れてしまっていた。そんな宝箱が先日発見され、我が家に送られてきた。タイムカプセルならぬ、タイムボックスである。

 本は大学の勉強のために買った経済学の本で、今さら読んでも全く面白くない。一方、カセットテープが約30本。大学生の頃に聞いていたもののようだ。主にカーステレオで聞いていたもので、そのカセットケースを車に乗せていたことはよく覚えている。さて、我が家では、90年代に音楽の記録媒体をMDに変えたタイミングで、カセットはデッキもテープも一掃してしまっている。30余年の時間を飛び越えてテープはやってきたが、あいにく音を出す機械が手元にない。

 いろいろと懐古的な調査研究が好きで、原稿を書いたりしていたが、その対象時期の軸をこれまでの自己の少年期である70年代から、自己の青春期である80年代に移そうかと思っていた。今回発掘されたカセットテープはまさにリアルタイムな音源資料である。加えて言うと、今でもCD等で聞くことができたり、ファイルとして自宅のサーバー内に保管している曲でも、できれば当時の機材で、当時の主軸メディアであるカセットテープ(に録音し直してでも)の音源を鳴らすリアルさが欲しいと思っていた。

 80年代の音楽機材となると、ラジカセが最も身近だった。この時期、ステレオになって、大型化していく傾向にあった。ミニコンやシスコン、バラコンも確かにあったが、金額的にこれらには手が出なかった。そこで当時のラジカセをネットのオークションやフリマで探してみるも、良いコンディションのものはほとんどない。特にカセット部分が。30~40年近く経っているため、駆動ベルトがまずいかれている。この捜索には少々時間が掛かりそうだし、それなりの出費を覚悟する必要がありそうだ。

 そこで、近くのハードオフにカセットテープが再生できるものがないか見に行った。カセットが再生できる機材を探したところ、ジャンクコーナーにパナソニックのミニコンが1,650円で出ていた。DVD(CD可)5連奏、MD、カセットテープ(リバーシブルヘッド)、ラジオももちろん付いている。スピーカーもセットで、2000年当時に10万円ほどで売られていたようだ。ジャンクコーナーながら、動作確認時に音は出たとのことなので、迷うことなく購入して帰った。この中古品の唯一の欠点はリモコンが付属していないことくらい。

 動作には全く問題なかった。30年以上前のカセットテープは思ったよりもクリアな音だった。ただ、きちんと一方に巻き取っておかなかったテープの部分は回転がおかしかったり、音が歪んだりする。まあ、それも含めて味ってことで。いずれこれらのテープを80年代のラジカセで鳴らしてみたい。

(秀)