第2033話 ■パチンコ店に対する中長期的視点

 依存症なんだろう。命懸けで、もっとも、命懸けと言うほどの危機感を持っているとは思えないが、自粛要請などなりふり構わずに、パチンコを打ちに行く人々。越境してまでの輩も少なくないと報道されている。一般的な思考からすれば、彼らは異常としか言いようがない。僕らには彼らの語る(屁)理屈がわからないのと同じくらい、彼らも世間の人の言い分など理解できる状態にないのだろう。

 営業自粛の要請を聞き入れずに営業を続けるパチンコ店がある。大半の店は自粛要請に応じたものの、幾つかにおいて、これまたお互いの主張がかみ合わない。「店が開いているから客が行く」とか「客が来るから開けている」という理屈からは解決の糸口は見つからない。店名を公表することで、「新たな客を呼び寄せるから、逆効果だ」と言う人もいるが、それは短期的視点に凝り固まってしまっている。ちょっと、ここで中長期的視点での変化を想像してみたい。

 やがて、コロナウイルス騒ぎが収束し、徐々に日常への生活に戻りつつある日。営業を自粛していたパチンコ店も営業を再開する。しかし、復興に向けて、多くの人は経済活動を中心としたことに時間を割り当て、レジャーや娯楽に対する優先順位は二の次になるだろう。特にパチンコはこの間のネガティブなイメージの増加により、大きく集客数を落としてしまっている。世間的には「パチンコなんかいらない、無くしてしまえ」と思う人が大多数になっている可能性も高い。

 「営業しないと生きていけない」という言い分もあるだろうが、飲食店などと一様に論じるわけにはいかない。行政は業界団体を通じても、自粛の要請を掛けているらしい。業界団体が恐れていることは、ここ当座数か月の損益よりも、コロナ騒ぎの収束後のことだろう。最悪の場合、法規制によりこれまでのような営業ができなくなる可能性もあるが、そうでなくても、世間のパチンコに対するネガティブな反応で、市場規模が急速にしぼんでしまうとしたら。

 18年度レジャー白書によると、パチンコ人口は950万人。仮にこれが半分になったとすると、約半分のパチンコ店がなくなろうことになるだろう。どのくらいの減少になるかはわからないが、今この時のイメージが大きく影響するのは間違いない。しかもこれらの反応は店を再開した直後から現れる。今でも営業を続けているような店が真っ先に影響を受けるだろう。越境からの来店がなくなり、地元の人も行かなくなるだろうから。

 コロナウイルス騒ぎ収束後に、客が戻るものと離れるもの。収束後、後者を支援しようとか税金で救済しようとはならないはず。世論次第では、パチンコ業が一気に衰退することの危機感も業界団体にはあるはず。そんな切り口からの説得も行っているはずだろうが。

(秀)